日本補綴歯科学会雑誌
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臼歯の咬合支持の喪失がラットの高次脳機能に及ぼす影響
臼歯抜歯と臼歯歯冠切除の違い
佐々木 快輔
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2002 年 46 巻 2 号 p. 185-194

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抄録

目的: 本研究は, ラットにおいて臼歯抜歯と臼歯歯冠切除による咬合支持の喪失が高次脳機能へ及ぼす影響を同一条件下で, 行動学的および薬理学的に検討した.
方法: 実験にはWistar系雄性ラットを用い, 上顎臼歯を抜歯した臼歯喪失群, 上顎臼歯歯冠部を切除した歯冠切除群 (各10匹), および非処置の対照群 (10匹) を設定した. 抜歯および歯冠切除後1, 3, 7週目に放射状迷路課題における遅延試行試験を行った. 迷路実験終了後, 大脳皮質, 線条体, 海馬の神経伝達物質のアセチルコリン (ACh), ノルアドレナリン (NE), ドーパミン (DA), セロトニン (5-HT), および代謝産物のコリン (Ch), ドーパック (DOPAC), 5-ヒドロキシインドール酢酸 (5-HIAA) の含有量の測定を行った.
結果: 行動学的観察結果から, 実験群は対照群に比較して迷路課題の遂行阻害を認め, その程度は臼歯喪失群で顕著であった. 薬理学的観察結果から, 歯冠切除群は海馬においてのみDA含有量の低下を認めたのに対し, 臼歯喪失群は海馬および線条体のDA含有量に低下を認めた. 行動学的実験における成績と神経伝達物質の含有量との相関から, 線条体において歯冠切除群はACh含有量に相関を認め, 臼歯喪失群はAChおよびDA含有量に相関を認めた.
結論: 高次脳機能に及ぼす影響は臼歯喪失群と歯冠切除群で異なり, その影響は臼歯喪失群で顕著であることが示唆された.

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