日本補綴歯科学会雑誌
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表情筋の緊張による口角牽引が下顎位に及ぼす影響
齋藤 隆哉小出 馨浅沼 直樹西巻 仁植木 誠
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2002 年 46 巻 2 号 p. 195-202

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抄録

目的: 咬合採得および咬合調整を行う際の基準となる筋肉位に対して, 表情筋の緊張が及ぼす影響を明らかにすることを目的として, 表情筋により口角を後方へ強く牽引したときの下顎の偏位を測定した.
方法: 顎口腔系に機能異常を認めない被験者13名に座位で自然頭位をとらせ, アンテリアジグを装着し, 上下歯列の接触による影響を排除して実験を行った. 筋肉位で閉口した状態から口角を後方へ強く牽引したとき, その後さらにタッピングを行ったときの下顎の偏位を継続的に光学系非接触方式の三次元6自由度下顎運動測定装置であるナソヘキサグラフ®に改良を加えて測定し, 比較した.
結果: 筋肉位と比較して口角牽引時には, 切歯点で後方へ平均0.18mm, 左側顆頭点で平均0.00mm, 右側顆頭点で後方へ平均0.04mmの偏位が認められ, 前後方向に大きなばらつきがみられた.筋肉位と比較して口角牽引状態でのタッピング時には, 切歯点で後方へ平均0.50mm, 左側顆頭点で後方へ平均0.25mm, 右側顆頭点で後方へ0.36mmの偏位が認められた.
結論: 表情筋を緊張させることにより口角を後方へ強く牽引すると, 筋肉位に対して下顎は偏位を示し, 前後方向に大きなばらつきがみられた. 口角牽引状態でタッピングを行うと, 下顎は筋肉位より著明に後方へ偏位することが明らかとなった.

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