日本補綴歯科学会雑誌
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金銀パラジウム合金の変色に関する研究
第1報口腔微生物の影響
高山 慈子三浦 英司細井 紀雄石川 正夫渋谷 耕司
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2002 年 46 巻 2 号 p. 223-232

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抄録

目的: 本研究は, 金銀パラジウム合金の変色と, 口腔微生物ならびにVSC (CH3SH, H2S) 産生量との関連性をin vitroで明らかにすることを目的としている.
方法: 4種の歯科鋳造用金属試料をFusobacterium nucleatumまたはStreptococcus mutansを加えたTHB培地 (一部L-Cysteine添加) に入れ, 37℃で嫌気培養を4週間行った. 培養後, 試料の輝度, 色調の測定ならびに定性分析を行った.
結果: 1. F. nucleatumを培養した培地で, 金銀パラジウム合金は輝度, 色差ともに大きな変化を示した. 2. 金銀パラジウム合金は, 口腔微生物のない状態やS. mutans培養環境下でも色調変化が認められ, L-Cysteineを添加すると顕著となった. 3. チタン, コバルトクロム合金, 白金加金は変色が少なかったが, 口腔微生物培養環境下でより輝度の低下を認めた. 4. 定性分析の結果, 金銀パラジウム合金試料では全条件で硫黄 (S) が検出された.
結論: 本研究により金銀パラジウム合金の変色と口腔微生物, VSC産生量との関連性が検証された. VSCを多量に産生するF. nucleatumは, 歯周病や口臭の原因菌とされており, 金銀パラジウム合金の変色や腐食は, 歯周疾患, 口腔清掃状態などの口腔内環境と深いかかわりがあることが判明した.

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