抄録
磁性アタッチメントはスタッドアタッチメントの1種であるが, 維持力の発現に磁石の吸引力を利用しているため, ほかの支台装置にはない特徴を構造的にも, 力学的にも有している. 構造的には, メール, フィメールに相当する磁石構造体とキーパーが互いに平面同士でありながら, 吸引 (維持) 力を発現するという特徴がある. 一方, 力学的特性としては, 磁石構造体とキーパーとの間には常に一定の維持力が働いている. よって, この一定の維持力以下の離脱力が着脱 (着磁) 方向に作用しても両者間の移動距離は0に近いが, それを越える力が作用したとき, はじめて両者は引き離される. さらに, 力の作用する方向が本来の着脱 (着磁) 方向とずれを生じ, 斜め方向に作用した場合, この一定の維持力よりも小さい力で両者は離脱するという特性がある. コーヌステレスコープも常に一定の維持力が働き, それ以下の力が作用しても, 磁性アタッチメントと同様, 内・外冠は離脱しないが, 斜め方向に離脱力が作用した場合, この一定の維持力以上の力が作用しないと両者は離脱しない. ここが両者の力学的相違点である. 以上より, 磁性アタッチメントは, 義歯の取外しエネルギーが小さく, 着脱方向の自由度が大きい. また, 「維持without把持」というほかの支台装置にはみられない特徴を有するので, 骨植不良歯, 歯冠崩壊歯, 短根歯, 上顎前歯など側方力を負担するうえで, 不利な条件の歯に応用可能である.