日本補綴歯科学会雑誌
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オーバーデンチャーをめぐる諸問題
解決されたもの, 解決途上のもの
真鍋 顕
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2004 年 48 巻 3 号 p. 372-383

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抄録

オーバーデンチャーは, 歯冠/歯根比の改善や, 咬合平面の平坦化などの利点を有し, 主として少数残存歯症例に効果的に用いられている. しかし, 歯冠を切断し, 根面を義歯で被覆することによる問題点もみとめられる. また, 支台歯の延命効果が大きいことの反面, それをさまたげる修飾要素も多く, 残存歯の寿命を確実に予測することは困難である. 筆者がこれまで経験してきたオーバーデンチャーの症例を概観すると, 次の問題点に対しては, 解決策が得られたように思われる.(1) 根面板の脱落: 接着性レジンセメントの使用,(2) 義歯の破折: 適切な金属補強構造の設計,(3) 支台歯の清掃性の低下: 電動歯ブラシとPMTC. しかし, 残存歯の延命を第一の目的と考えた場合, 疑問と思われる設計のオーバーデンチャーが見受けられることもある. 少なくとも, 移行義歯としてのオーバーデンチャーと, 残存歯のできる限りの延命を意図したオーバーデンチャーとは, 明確に分けて考える必要があるだろう. また, 患者の習癖や, 固有咬合力の違いによって, 残存歯の延命効果が, 期待されたほどに発揮できないこともある. さらに, オーバーデンチャーを選択する時期が遅すぎたのではないかと考えられる症例も散見される. 力のコントロールと, 支台歯の負担能力の確実な予測は, 今後の重要な課題と思われる.

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