抄録
8020という言葉を聞いたときは “贅沢な注文” だと思った. しかし欠損歯列の難症例を経験するうちに, 20歯は難症例にならないためにはむしろ必要最少値であると思うようになった. それは咬合支持数が4以下にならないためには18歯以上が必要で, 咬合支持数が4以下になると欠損歯列では難症例になりやすいという臨床的な根拠からである. 長期経過でみると, 80歳で20歯以上を保有することができた症例は咬合支持が安定していることが多く, 多数歯を失って8020が達成できなかった症例では咬合支持に欠陥があることが多かった. 8020の達成には, カリエスになった歯は歯冠修復による崩壊防止が必要であり, 同時に咬合支持に欠陥が生じた欠損歯列では積極的に咬合再建をすることで, 歯列の崩壊を食い止めることが必要になる. さらに大切なことは, 継続的なチェックをしながら, 繰り返し悪化防止を行っていく必要である. 継続対応が可能ならば診療室全体の8割ぐらいは8020という目標を達成できる可能性が高い.