2022 年 78 巻 7 号 p. III_381-III_389
瀬戸内海の環境を考える上で重要となる底質からの栄養塩の溶出量を把握するために、既存の文献等から溶出データ、環境データを収集し、水温、底層溶存酸素濃度、底質有機物量の3項目から栄養塩の溶出量を推定することを試みた。底質有機物量の指標には、全有機炭素及び強熱減量を用い、推定する栄養塩は溶存無機態窒素(DIN)及び溶存無機態リン(DIP)とした。作成した式と、瀬戸内海の環境データから、瀬戸内海全域のDIN及びDIPの溶出量を推定した。瀬戸内海全域の溶出量は、1980年頃から増加した後に減少に転じ、2015年頃には1980年頃を下回る値となった。また、瀬戸内海全域における近年の溶出量の減少は、特に溶出量が多い海域において、その溶出量が減少したことが大きな要因であると示唆された。