抄録
目的: 金属加工技術の1つである粉末冶金法にチタン粉末を利用して作製した多孔質材料は, 幅広い分野で用いられている.この技法を補綴物作製に利用できるならば, 融点以下の温度で焼結するため, 鋳造が容易でないチタンの応用が拡大できる.そこでドクターブレードにより作製したTiシートから得た焼結体の機械的諸性質の検討および歯科補綴物への応用に関する検討を行った.
方法: 球形Ti粉末にバインダーを添加した厚さ1mmのTiシートを作製し, 900-1, 150℃ の間を, 50℃ 間隔6種の温度で焼結を行った.焼結体の評価としては, 硬さ試験, 曲げ強さ, 引張強さおよび寸法変化率の測定を行い, さらにSEM観察で行った.また耐火模型上で焼結を行い, 耐火模型の焼結体への影響を確認するため同様の評価を行った.
結果: 機械的諸性質は, 焼結温度を高く設定することで有意に増加し, さらに, 粉末およびバインダー混合時に粉砕工程を加え, 脱バインダー工程を加えることで, 機械的諸性質においてより優れた焼結体が得られた.また, 耐火模型材を用いた焼結では, 模型のみの前焼成を100分以上行うこと, および焼結温度を1, 050℃ 以上に設定することにより, チタン焼結体の機械的諸性質が実用レベルに達することが確認された.
結論: 以上より, 焼結チタンの歯科補綴物への応用が可能であると考えられた.しかし焼結体の収縮量のコントロールに関しては, 今後も検討が必要である.