日本補綴歯科学会雑誌
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顎関節症における開口障害の下顎頭の回転と滑走による運動論的解析
安藤 栄里子重田 優子小川 匠
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2005 年 49 巻 2 号 p. 231-241

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抄録
目的: 下顎頭の回転量と滑走量が, 顎関節症患者における開口障害の成因を追究するうえで有用なパラメータとなりうるかどうかの検討.
方法: 正常者7名と顎関節症患者55名に対して, 習慣性1回開閉口運動時の下顎頭の回転量・滑走量を, 6自由度顎運動測定装置を用いて計測した.自力最大開口量40mm未満を開口障害とし, 被験者を開口障害あり群と開口障害なし群に分類し, 各群の下顎頭の回転量・滑走量と最大開口量, 関節円板動態および痔痛との関係について検討した.
結果: 最大開口量と下顎頭回転量, 下顎頭滑走量は強い相関を示した.両者を比較すると下顎頭回転量の相関係数のほうがやや高かった.関節円板動態別にみた最大開口量, 下顎頭回転量および滑走量の分布に差は認められなかった.一方, 筋痛は最大開口量の減少に影響を及ぼしていた.たとえ開口障害なし群に属していても, 実際には制限を受けていた.下顎頭滑走量は, 開口障害があり関節痛のあるものでは有意に制限されていた.ただし, 両側性非復位型関節円板転位 (Wo-Wo) 群では関節痛があっても下顎頭滑走量は制限を受けず, 開口障害を呈するとは限らなかった.一方, 筋痛がある場合には下顎頭滑走量は有意に制限されていた.
結論: 下顎頭回転量は筋痛との関連性が認められ, 外科的療法の適否の決定などに有用であることが示唆された.一方, 下顎頭滑走量は, 開口障害, 関節円板動態, 疼痛などの条件の組み合わせにより異なる傾向を示した.
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