2022 年 25 巻 1 号 p. 10-17
3 次元相同モデルを用いて現代日本人における肩甲骨全体形状のバリエーションの抽出を試みた。全頂点の3 次元座標に対する主成分分析の結果,第1 から第5 主成分までで累積寄与率が約50% となった。第1 主成分は,肩甲骨体部の彎曲が強まるにつれて,関節窩や烏口突起の前方への傾きが強まる成分であった。第2 主成分は,肩甲骨体部が頭尾方向に長くなるにつれて,棘上窩に対する棘下窩の面積が大きくなる成分であった。第3 主成分は,肩峰の前傾に伴い棘上窩の幅が小さくなる成分であった。第4 主成分は,肩峰が外側に張り出すにつれて棘上窩の幅が大きくなる成分であった。第5 主成分は,肩甲棘から肩峰にかけての前傾に関する成分であった。肩甲骨には多くのバリエーションが存在し,全体形状を包括的に解析する重要性が示唆された。今後は同手法を用いることで,肩甲骨全体形状と肩関節疾患の関連性の解明などが期待できる。