論文ID: JJPTF_2023-06
脳が損傷を受けると重篤な機能障害が生じる。脳損傷患者の多くは高齢者であるが,高齢なモデル動物を用いた研究はほとんど進んでいない。本研究では,高齢期の脳損傷モデルマウスにおいて,自発的かつ継続的な走行運動がもたらす皮質脊髄路の神経発芽や運動回復への効果を検証した。高齢マウスでは,若齢期にみられる脳損傷後の脊髄内での皮質脊髄路の発芽が生じず,運動機能が回復しない一方,自発的運動が発芽を増大させることが明らかになった。また,高齢期における脳損傷前後の運動が誘発する運動野の遺伝子変化を網羅的に解析した結果,運動群では概日時計関連遺伝子が増加することが示された。さらに,自発的運動の継続が高齢マウスの昼夜の活動リズムを若齢期に類似したパターンに回復させることも明らかになった。自発的かつ継続的な運動は,加齢により乱れる概日リズムを調整し,失われていた脳損傷後の神経修復力を回復させる可能性が示された。