アキレス腱断裂後は損傷側の底屈筋力低下が残存し対側同等には戻らないことが最大の課題である。この要因は,腱の瘢痕治癒による力伝達機能低下,腱延長に伴う筋張力低下が挙げられるが,これらと腱のメカノバイオロジー機構との関係性は未解明のままであり,理学療法戦略の確立を阻んでいる。本研究では,関節固定と筋麻痺により腱が受容するメカニカルストレスを制御したマウスモデルを用い,アキレス腱断裂縫合術後における腱への伸長負荷を減らすことが腱延長や強度回復,コラーゲン成熟にもたらす影響を検証した。筋収縮が維持されたマウスは術後4週で腱長比率・強度が,非術側と同等に戻る一方,筋収縮が阻害されたマウスでは,腱の強度が劣ったままであり,腱長比率が非術側より延長することが明らかとなった。アキレス腱断裂術後早期における腱への除荷,特に筋収縮の制限が腱の構造変化をもたらし,永続的な筋力低下の要因となることを示唆した。
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