2022 年 23 巻 1 号 p. 1-8
A大学は2020年度「看護の統合実習」を,臨地実習からオンライン実習へ変更した.本稿は「看護の統合実習」の企画とその評価を記述することを目的とする.A大学の「看護の統合実習」の目的は,病院や施設で,臨床に即した看護を経験する中で,専門職者として必要な知識・技術・態度を統合できる能力を獲得することである.学生は〈本物の患者を想像しながら事例に向き合えた〉ことや,〈記録物・ディスカッションに時間をかけることができた〉ことをオンライン実習の効果と捉えていた.一方,〈臨床と同様の臨場感が得られない〉こと,〈患者との双方向性のやり取りができない〉こと,〈学生や教員との意思疎通の不十分さ〉,〈自身の成長の手応えがない〉ことをオンライン実習の限界と捉えていた.以上のように,臨地実習からオンライン実習に変更し,学生はオンラインならではのメリットと限界を実感していた.本稿の結果から,オンラインによる実習の企画だけでなく,臨地実習前の講義・演習へのあり方についての示唆を得た.