日本赤十字看護学会誌
Online ISSN : 2433-3425
Print ISSN : 1346-1346
ISSN-L : 1346-1346
最新号
選択された号の論文の14件中1~14を表示しています
原著
  • 阿部 利恵
    2025 年26 巻1 号 p. 22-31
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル フリー

    目的:透析施設において「終末期ケアを語る会」を展開し,参加者の変化を明らかにする.

    方法:アクションリサーチの方法を用い,参加者が安心して透析患者の死をめぐる経験について語り合う場としての「終末期ケアを語る会」の開催をアクションとして16回実施した.

    結果:自分の気持ちや考えを話す機会のない日常に気付く,事前指示書の取り組みの難しさから日常的なかかわりの大切さに気付く,透析患者の死を見据えたケアにおける感情を吐露し共有する,これまでの慣例を超えて支えあう組織へと変化する,終末期ケアについて相談し合う場を自分たちで続けようと模索するという5つの変化が見出された.

    考察:安心して語り合える場を組織の中で育むことにより,日常的なケアの延長線上に終末期ケアがあることへの気付きと,医師中心の固定化された組織から主体的なケアを協働で実践する組織へと変化する可能性が示唆された.

  • 濱田 真由美, 佐々木 美喜
    2025 年26 巻1 号 p. 45-55
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/06/20
    ジャーナル フリー

    目的:日本国内の質的研究を統合し,子どもの状態に関わらず父親となる男性に共通する経験を体系的に明らかにする.

    方法:医中誌Web,Google Scholarから対象文献を抽出し,メタ・サマリーを行った.

    結果:対象文献40件から抽出した記述は統合結果66に要約し,10のトピックに分類された.最も頻出した統合結果は【家族を支える大黒柱としての役割を遂行する】(42.5%),次いで【家事・育児のために仕事の価値づけ,時間,内容の調整・変更を行う】(40.0%),【妻(母親)をサポートし負担を軽減する】(37.5%)であった.

    結論:経済的に家族を養うという性別役割期待や良い親になることへの期待,子どもが生まれたり増えたりすることで生じる関係性やライフスタイルの劇的な変化のなかにいる男性を心理・社会的に支援することが重要である.特に,父親に対する就業支援は喫緊の課題である.

  • 樋口 佳栄
    2025 年26 巻1 号 p. 71-80
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者(80歳以上)が慢性心不全とともに暮らす体験について,医療者の関わりも含めて,病いや身体をどのように知覚し解釈し意味付けていくのかということに焦点を当てて詳細に記述し,医療者の視点と比較しつつ当事者の視座からみたセルフケアとその意味について論じる.【研究方法】現象学的な視座を基盤とした縦断的質的記述的研究.分析はvan Manenの手法を手掛かりにした.【結果】4名の参加者を得て約2年間でそれぞれ約6回のインタビューを実施した.結果「老いと心臓の狭間に浮き沈みする憂鬱と希望」,「心臓は黒幕—痛む腰の背後に見え隠れする心臓」,「自らの日々の行為を注視する」,「遊ぶために体をつくる」,のモティーフが抽出され詳細に記述した.【考察】結果の記述から,慢性心不全とともに生きる高齢者のセルフケアの経験は「暮らしのなかの老いと慢性心不全—当事者が解釈する自らの“からだ”と医療者が解釈する身体のずれ」を含む3つの視点で解釈することが重要であることが示唆された.

  • 千葉 朝子, 村瀬 智子, 森田 一三
    2025 年26 巻1 号 p. 81-90
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は母親が母乳育児に感じる心地よさ尺度の信頼性と妥当性の検証を行うことである.信頼性はクロンバックα係数および再テスト法による安定性の確認,妥当性は確認的因子分析,外的基準尺度との相関,ボンディングとの関連により検証した.分析対象779名の結果,確認的因子分析においてX2=1838.357, df=269, p<.001, GFI=.816, AGFI=.778, CFI=.812, RMSEA=.087と妥当な適合度が見られ,外的基準とした尺度間に有意な相関関係があり,A Japanese version of Mother-Infant Bonding Scaleの下位尺度間とに有意な関連があった.1回目調査と2回目調査の尺度全体のクロンバックα係数は.906~.913,級内相関ではr=.706~.872(p<.001)と有意な相関が見られ,尺度の信頼性と妥当性が検証された.

研究報告
  • 髙橋 のどか
    2025 年26 巻1 号 p. 11-21
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,急性期の脊髄損傷患者を看護する看護師の感情体験を明らかにすることである.急性期混合病棟で脊髄損傷患者の看護経験がある看護師5名に半構成的面接調査を実施した.

    データ分析の結果,脊髄損傷という疾患の特異性及び急性期混合病棟の特徴を背景とする感情体験として,7つのカテゴリが抽出された.看護師は脊髄を損傷した【患者の今後を見据え踏み込んだかかわりを躊躇う】が,【入院生活の中で垣間見る患者のプラスの変化により患者への志向が高まる】という感情体験により,同情から共感へとプロセスを経て援助関係の構築に至ることが推察された.また,急性期混合病棟で【多重業務に起因する不全感は割り切らざるを得ない】という対処行動をとっており,ネガティブな感情に対して無意識下で看護師自身の感情や認識を変容する方略を用いていることが推察された.看護師が自身の感情や思考パターンを知ることが必要である.

  • 鈴木 唆栄, 大月 恵理子
    2025 年26 巻1 号 p. 56-63
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/07/20
    ジャーナル フリー

    本研究はRodgersの概念分析法を用い,我が国の親への移行期における夫婦の性別役割分業観の概念の構成要素を明確化することを目的とし,25文献を分析対象とした.結果,属性は4カテゴリー,先行要件は3カテゴリー,帰結は4カテゴリーが抽出された.よって,我が国の親への移行期における夫婦の性別役割分業観は,「夫婦の役割調整は性差によるかは明らかではないが,それは一定ではなく親への移行に伴い,夫婦を取り巻く状況が変化する度に互いの要求に差異が生じる役割調整が起き,性差によらない役割調整をしたり性差による役割調整をしたりしながら常に変化すること」と定義した.

  • 井田 亮
    2025 年26 巻1 号 p. 99-108
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    本研究は精神科慢性期病棟に入院する患者と看護師との対話を中心とした関わりのプロセスを描き出し,両者の関係性の変化と,対話的な関係がもたらした患者と看護師の変化,および対話の意味について考察することが目的である.

    研究参加者である3人の患者との関わりでは出会いの場面に怖さがあったが,言動を調整しながら対話を続けていくことで関係は接近していった.しかしそれは関係性の破綻の危機と表裏一体でもあり両者には認識のズレや両価的な言動への戸惑いがあったためである.なんとか関わりが続き,別れの場面では痛みが伴ったが,研究参加者はそれを乗り越え私を気遣うという暖かみのある感情を示した.対話を中心とした関わりは,患者に感情を帯びた現実的な関わりへの変化を,私には関係性が患者の孤立感の緩和に繋がり得ることへの気づきをもたらした.対話には患者に関心を持ち続ける姿勢と安全感のある場での支援の必要性が示唆された.

実践報告
  • 岡本 明子, 榊 惠子, 森本 淳子
    2025 年26 巻1 号 p. 64-70
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    本校の学生に対して,学習経験を積み重ねた4年次に,互いのフィードバックを通して,メンバー同士の相互の意味や自分や他者について理解することをねらいとした「グループダイナミクス」を試みた.この科目で学生が,自由に気づいたことをフィードバックするよう進めた.授業は,計8回とし,言語を介するグループ,身体を介するグループを体験してもらった.

    本稿では,受講した科目の教育内容を報告したうえで,学生が提出したレポートから「グループの体験」をどのように捉えたのかを明確にすることを目的とした.その結果,言語を介するグループでは,「沈黙による居心地の悪さ」と「醸し出す緊張と緩和」を体験していた.身体を介するグループでは,「感情と動きの連動感」「他者の気持ちを確認するおもしろさ」を体験していた.この科目を受け,学生は自分自身のさまざまな感情に気づくとともに,他者との間で感情をどのように表現して理解しあっているのかを学んでいた.

  • 近藤 絵美, 巻野 雄介, 竹内 貴子, 高下 翔, 福岡 友理恵, 西久保 ひろみ, 山田 聡子
    2025 年26 巻1 号 p. 91-98
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/01
    ジャーナル フリー

    本研究は,看護学生に対する静脈血採血演習において,超音波画像診断装置(以下,エコー)を用いた血管アセスメントにおける学習効果と今後の課題を明らかにすることを目的とした.対象は「基礎看護技術III」履修者の看護学部2年生134名である.肘窩の静脈血管について,視診と触診での観察とエコーを用いた観察を比較する演習を行い,演習終了後にオンライン調査を実施した.回収率は68.7%であり,血管アセスメントの視点に関する6つの項目すべてで,「エコーを使った方がとてもわかりやすかった」との回答が得られた.また,エコーを用いたことによる感想・意見として,エコー画像の理解の難しさを感じる一方,血管の走行や深さ,太さなどが可視化され患者の安全と実施者(看護師)にとって有用であるとの意見が示された.本演習の学習効果として,穿刺部位の選定や穿刺方法の理解の促進,根拠のある看護技術の重要性を強化できることが明らかになった.

資料
  • 鬼頭 幸子
    2025 年26 巻1 号 p. 1-10
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/04/30
    ジャーナル フリー

    本研究は,看護補助者への業務の委任における看護師の判断に関する国内外の文献を検討し,判断の特徴と日本における今後の課題を明らかにすることを目的とした.医学中央雑誌Web版(Ver.5),CINAHL, MEDLINE, PubMedを用いて期間は限定せずに検索を行い,基準を満たした文献は計16件(日本7件,国外9件)であった.看護師の判断は,委任の適否に関する判断,委任業務の選定に関する判断,委任に関する看護補助者とのかかわりに関する判断,委任した業務の責任の所在に関する判断,の4つに大別された.看護師の判断の内容は多岐にわたり,専門的判断の必要性や患者の利益,安全性を考慮して行われていた.

    今後は,研究対象を広げ,委任の一連のプロセスにおける看護師の判断を明らかにする必要がある.

  • 本谷 久美子, 大工原 慈仁, 並木 麻利子
    2025 年26 巻1 号 p. 32-44
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/05/30
    ジャーナル フリー

    目的:日本の看護基礎教育における専門基礎科目の教授活動の内容と効果について明らかにする.

    方法:医中誌Web,CiNii,J-STAGEの文献検索データベースを用いて,「解剖生理学 or 解剖学 or 生理学 or 生化学 or 栄養学 or 薬理学 or 病理学 or 病態学 or 病態生理学 or 微生物学」AND「教授 or 教授活動」の検索式で検索した.

    結果:採択文献は31件で,解剖生理学に関する文献が多かった.教授活動では人体または動物の解剖実習,解剖実習以外の実験・実習,自己学習とプレゼンテーション,教材や教育プログラムの開発,看護教員による教授活動,専門基礎科目と専門科目の統合,解剖学の学力強化支援の7つの特徴と,学生の理解度や興味関心の促進,テスト得点の向上,自己学習への活用などの効果がみられた.

    結論:解剖生理学以外の科目の教授活動を明らかにするとともに,看護教員の教授活動の様相を明らかにし評価に結びつかない原因についても探究する必要性が示唆された.

  • 木村 美香
    2025 年26 巻1 号 p. 109-118
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/10/25
    ジャーナル フリー

    目的:糖尿病性腎症高齢患者の透析導入に伴う移行の見通しの関連要因を明らかにする.

    方法:全国118施設で定期的に血液透析を行っている糖尿病性腎症から透析を導入した65歳以上の患者1,289名に,無記名自記式質問紙調査を実施し,共分散構造分析により分析した.分析には欠損値を補完したデータを用いた.

    結果:496名より回答を得た(有効回答率38.5%).見通しには先行要因として,透析導入前からの看護師との相互作用(.19, p<0.01)と透析施設医療従事者の相談しやすさが(.25, p<.001),結果要因として自己効力感(.46, p<.001)が関連した.

    結論:糖尿病性腎症高齢患者が透析導入に伴う移行の見通しを獲得するためには,看護師が患者に,透析導入前から関わる必要性が示唆された.

  • 鎌田 真規子
    2025 年26 巻1 号 p. 119-128
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高齢がん患者の治療に関連した経験に関する研究の動向と知見を明らかにし,今後の看護実践と研究の方向性の示唆を得ることである.医学中央雑誌web版(Ver5),CINAHL with Full Text,MEDLINE with Full Textを用いて2007年から2023年に発表された原著論文を検索し,32文献を分析対象とした.分析の結果,高齢がん患者の治療に関連した経験は,加齢に伴う複合的な脆弱性と,それに対する多様な適応過程によって特徴づけられることを明らかにした.特に,困難を乗り越え適応しようとするレジリエンスと,人生を穏やかに受け入れる老年的超越という二つの側面が示された.これらの知見は,高齢者が持つ身体的・心理社会的脆弱性を理解し,それぞれの人生において,その状況に合わせた適応を試みることを尊重し,支援することの重要性を示唆する.今後の研究では,高齢者の個別的経験を探究し,高齢者が主体的に人生を生き抜くための,具体的な看護介入を構築する必要がある.

  • 福島 綾子, 吉原 駿, 木村 涼平, 梶原 弘平, 原田 紀美枝, 宇都宮 真由子, 中山 晃志, 伊藤 明子
    2025 年26 巻1 号 p. 129-135
    発行日: 2025年
    公開日: 2025/12/25
    ジャーナル フリー

    目的:これまで被災により避難を要するような大規模な災害を経験したことがない地域住民が行っている減災への取り組みの実態を明らかにする.

    方法:大規模な災害を経験したことがない地域の中でも被害想定の異なる2地区に対して無記名自記式質問紙を用い,対象世帯の属性や災害への取り組み状況について調査を行った.各調査項目について単純集計およびカイ二乗検定を行った.

    結果:A地区:119世帯(回収率19.1%),B地区:266世帯(回収率31.3%)から回答を得た.両地区ともに地域の特性にあった災害の情報を知りたいと考えていた.備蓄品を備えていたのは約半数の世帯にとどまり,備蓄品の準備と家族会議の実施状況に有意な関連が認められた.

    結論:非被災地域住民に対して地域特性に合わせた情報提供と,家庭内で災害について話し合いができるような工夫を行うことで,減災への意識を高め,具体的な行動につなげることができる.

feedback
Top