日本赤十字看護学会誌
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最新号
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原著
  • 遠山 義人
    2019 年 19 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,若年成人期に精巣腫瘍の診断・治療を受けた人の経験を,当事者の視点から明らかにすることを目的とした質的記述的研究である.若年成人男性3名に各3回のインタビューをした結果,『悪循環から抜け出すががんからは抜け出せない』Aさん,『病気になった自分を受け入れずに苦悩しながらがんと距離を置ける生活へと向かう』Bさん,『アイデンティティが揺らぎながらも取り戻していく』Cさん,というテーマが導かれた.

    診断後,彼らは過去と分断され今に留まるような時間経験をし,自ら孤独の世界に巻き込まれていた.さらに,当たり前に来ると思っていた未来を限定され,将来の自己像は崩れ,男性としての自己存在を問う経験をしていた.

    看護師は,彼らが医療とは異なる時間経験をしていることを理解し支援する必要がある.さらに,治療と関係のない話も取り入れながら信頼関係を築く等,彼らが気がかりや苦悩を語るきっかけを作ることによって,彼らが自己を認め,新たな価値を見出す可能性があると考えられた.

  • 小川 紀子
    2019 年 19 巻 1 号 p. 11-20
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    福島原発事故後県外へ避難前,避難中,福島県に戻ってからの3時期における母親の思いを明らかにすることを目的とし,県外へ避難当初乳幼児を育てていた母親7名を対象に,半構成的面接を行い質的に分析した.避難前では,【放射線に対する不確かさ】のなか,周囲の母親からの情報等から【子どもにとって放射線は害という確信】をし【子どものために避難を決意】した.避難中では,【環境が変化したことへの苦労】の中,家族と離れて育児や生活する辛さや【人間関係の悩み】を抱えていた.福島県に戻ってからでは,避難経験のない母親との【人間関係の悩み】や【子どもが受けるかもしれない差別への不安】を抱え,【放射線による健康被害への不安】から【子どもの安全を守るための対処】をしていたものの,子どもらしい生活をさせることができない状況にあった.以上から,県外避難から戻った母親の思いを理解した上で,放射線に関する必要な情報を提供しつつともに考える支援の必要性が示唆された.

研究報告
  • 谷口 千絵, 喜多 里己
    2019 年 19 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    【目的】東日本大震災時の被災地の災害拠点病院産科棟の妊産婦支援に向けて赤十字の病院助産師と派遣助産師がどのように協働したのか記述する.

    【方法】病院助産師2名と派遣助産師2名によりフォーカスグループインタビューにてデータを収集し,フォーカスグループインタビューのためのInterpretative Phenomenological Approachを用いて分析した.

    【結果】2つのテーマが抽出された.「助産師と赤十字のつながりの中で病院助産師のやり方に派遣助産師が合わせることに徹する」は,赤十字による災害支援を受けた助産師の体験とその場その人に合わせて働く助産師の専門性から違和感なく派遣助産師は支援先の病棟の助産師のやり方に合わせ,病院助産師はその意図を受けとめた.「見つけにくい妊産婦と通常の保健指導ができないことで残った課題」は,震災後の母子の支援について,病院助産師と派遣助産師は共に課題をみつけ解決策を探った.「病院助産師には話せない被災体験を派遣助産師が受け止める」は,被災した同士である病院助産師と妊産婦の関係を派遣助産師が補った.

    【結論】赤十字の支援の積み重ねと助産師との専門性により助産師の協働は成立したが,妊産婦のケアに課題が残った.

  • 大重 育美, 菅原 直子, 黒田 裕美, 有安 直貴, 清末 定美, 福島 綾子, 苑田 裕樹, 山本 孝治, 姫野 稔子, 髙橋 清美, ...
    2019 年 19 巻 1 号 p. 31-36
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    A大学では,地域における大学の役割として近隣の医療機関と連携した災害看護に関する現任教育の支援を検討している.平成29年度,A大学で災害看護セミナーを開催したが,近隣の医療施設からの参加者が少なく,むしろ遠方からの参加者が多かった.そこで本研究では,A大学近隣の医療施設が求める災害看護研修の内容を把握するためのニーズ調査を行った.その結果,A大学近隣の医療施設169機関を対象に調査用紙を配布し,31機関の回答を得た(回収率18.3%).対象者は,看護職が90%を占め,そのうち41%は看護部長であった.中規模病院が48%,小規模病院が16%,診療所33%であった.対象施設の背景として,マニュアル整備は66%であった.防災訓練の実施は77%,全職員を対象とした研修は32%であった.ニーズが高い研修では,災害の種類や特徴など基本的な知識を求めており,中でも災害時の物品整備,スタッフ教育に関する研修では病床区分による違いがみられた.

  • 小手川 良江, 本田 多美枝
    2019 年 19 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究は,中堅看護師が職務継続の危機を乗り越えるプロセスを明らかにすることを目的に,経験年数10年目以上の看護師5名に半構成的面接を行い,質的に分析した.

    中堅看護師は【仕事の負担や人間関係などの職場環境の揺らぎ】【家庭や育児環境の揺らぎ】【仕事や育児の価値観や自己概念の揺らぎ】がきっかけとなり,職務継続の危機に陥っていた.このような職務継続の危機に対して,【支援と自己の力で危機的状況を緊急回避する】ことによりいったん危機的状況を回避することが【仕事の負担や人間関係などの職場環境の揺らぎ】の調整につながった.また,【支援と自己の力で危機的状況を緊急回避する】ことによる負担軽減が,【支援により育児環境が安定する】【周囲からの支援に気づく】【看護に対する意欲や興味を思い出す】ことにつながり,3つの揺らぎが調整された.これらの結果,次は自分が支援をしたいという考えや自分も頑張りたいという気持ちが芽生え【キャリアビジョンを再構築】することにつながり,職務継続の危機を乗り越えていた.

    以上より,中堅看護師の内在する力を活かす支援が,キャリア発達の中断を防ぐために重要であることが示唆された.

資料
  • 矢野 真理
    2019 年 19 巻 1 号 p. 49-57
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,超高齢者のエンド・オブ・ライフケアについての研究動向と,ケアの課題を明確にすることである.論文の検索は,PubMed,CINAHL,医学中央雑誌Web版及びCiNiiを用いて行った.論文対象を国内外の原著論文と総説に絞り,33文献に精選した.文献の各著者が,「エンド・オブ・ライフケア」の視点で課題提起している箇所について抽出し,その後類似性によって分類した.その結果,超高齢者のエンド・オブ・ライフケアについての課題は,国内3つ国外5つに集約された.

  • 中村 滋子
    2019 年 19 巻 1 号 p. 59-67
    発行日: 2019/03/31
    公開日: 2019/03/29
    ジャーナル フリー

    [目的]看護系大学院修士課程を修了した教員が看護専門学校から看護系大学に移動した思いを明らかにする.[方法]看護系大学院修士課程を修了し看護専門学校から看護系大学に移動した教員5名に半構成的面接法を行い,大学に移動した思いを明らかにした質的記述的研究である.[結果]多くの学びを得て前に進みたいという目標を持ち続けるAさん,専門性を深めながら教育することを望んだBさん,研究と教育は両輪という信念を貫いたCさん,目指したい教育に向かって学び続けながら進みゆくDさん,自己を成長させる新たな目標に向けてチャレンジするEさんの5名の思いを記述した.[考察]研究を継続することや専門性を深めながら教育すること,学び続けて教員として成長することが大学に移動した思いとして示された.

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