蘇生
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症例
全身麻酔中に低血圧となったペースメーカ装着患者の1例
八木下 健
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2011 年 30 巻 2 号 p. 102-105

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抄録

 ペースメーカ挿入患者に対する全身麻酔下手術中に,難治性の低血圧を経験した。患者は60歳代の男性で,右側歯性上顎洞炎にて上顎洞根治術が全身麻酔下に予定された。既往歴として高血圧,労作性狭心症,高脂血症,前立腺肥大,完全左脚ブロックがあり,さらにIII度房室ブロックに対してディマンド型の永久ペースメーカが挿入されており,DDDのモードで管理されていた。前投薬としてミダゾラムを静脈内投与し,電気メスを使用する可能性があったため,術前にペースメーカモードDDDからVOOの固定レート70回/分に変更した。麻酔導入はミダゾラム,レミフェンタニル,プロポフォール,ロクロニウムの静脈内投与で行い,経口挿管後,レミフェンタニル,プロポフォールで維持した。静脈麻酔中に収縮期血圧60~70 mmHgの低血圧が持続したため,メトキサミンにて対処したが,思うような昇圧は得られず,ドパミン持続投与により手術終盤で血圧は徐々に回復した。手術時間67分,麻酔時間107分で終了し,手術室退室時にペースメーカモードVOOからDDDに変更し帰室した。
 ペースメーカ患者においては電気メスの電磁干渉を避けるためVOOやDOOのペースメーカモードが推奨されているが,VOOはレミフェンタニルによる低血圧を助長する可能性があるため注意を要する。また,ペースメーカ挿入患者では周術期の心機能評価や,術前のペースメーカモード変更テストが有用であると思われた。

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© 2011 日本蘇生学会
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