転倒により口にくわえた箸が喉に突き刺さり,一部折れて遺残し,先端が延髄下部の硬膜まで到達した症例を経験した。
箸による小児の事故例のほとんどは軽症で済むが,稀に中枢神経系,血管系,呼吸器系等の損傷により,致命的な病態に陥る。なお,中枢神経系の損傷については,解剖学的な構造により,延髄,上位頚髄,小脳等の損傷が生じ得るため,慎重配慮が必要である。
このような事故が起こり得るという認識は重要であり,事故防止について市民への啓蒙活動を進めるとともに,事故が生じた際の医療行為や医療体制についても,様々な角度からの検討が望まれる。