脂肪塞栓症候群は外傷,骨折後に0.3%-0.9%で起こる重篤な合併症である。症例は22歳男性,交通外傷で右大腿部変形があり救急搬送となった。来院時意識清明でバイタルサインは安定し,画像検査で右大腿骨骨折を認めた。入院2日目に低酸素血症,意識障害,点状出血を認め,脂肪塞栓症候群と判断した。脂肪塞栓症候群では3徴の低酸素血症や意識障害,点状出血を認めるが,3徴全て認めることは少なく診断は困難である。特に高齢者の低酸素血症や意識障害は,誤嚥性肺炎やせん妄等と認識される可能性があるため,骨折や外傷の入院症例では脂肪塞栓症候群の合併を念頭に置いた管理が必要であると考えた。