蘇生
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生体腎移植術早期に急性心筋梗塞をきたした1症例
上田 聡子松本 聡国広 充河田 竜一松本 美志也中木村 和彦坂部 武史
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1997 年 16 巻 1 号 p. 38-42

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抄録
生体腎移植後早期に心筋梗塞を併発した症例を経験した。症例は43歳男性で, 母親をドナーとする生体腎移植術を施行された。術前に虚血性心疾患を疑う所見は認めなかった。手術前夜と当日朝の免疫抑制薬投与後に悪心, 嘔吐, 胸痛をきたしたが, 免疫抑制薬の副作用と考えられた。患者は手術室入室時にも悪心, 嘔吐, 胸痛を訴え, 心電図上ST低下を認めた。しかし, ドナーはすでに執刀されていたこともあり, ニトログリセリン, ドパミンを持続投与しながら手術を施行した。術中呼吸・循環は安定していた。術後2日目に再び胸痛, 呼吸困難, ST低下を認め, 翌日の心エコー検査で下壁梗塞と診断した。冠動脈造影で3枝病変が確認され, 術前から病変は存在していたと考えられた。本症例では49日後冠動脈バイパス術が無事施行できたが, すくなくとも術前に虚血性心疾患を疑ってもう少し慎重な検査が必要であったと考える。
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