日本鼻科学会会誌
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原著
副鼻腔線維性骨異形成症に伴う鼻閉に対する減量手術の経験
阿部 郁岡野 光博橘 智靖濱田 浩司西﨑 和則
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2012 年 51 巻 4 号 p. 489-494

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抄録

【はじめに】線維性骨異形成症(Fibrous dysplasia:FD)は,線維性結合組織の増殖と未熟な骨梁の新生を特徴とする非腫瘍性の進行性骨疾患である。我々は,内視鏡下に減量手術を施行し著明な鼻閉の改善が得られた鼻副鼻腔FD症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
【症例】36歳男性。主訴は右鼻閉と鼻漏。4年前に右鼻閉の増悪があり近医耳鼻咽喉科を受診。FDの可能性を指摘されたが,手術では視神経損傷の危険性があるとの説明を受け経過観察を選択した。3年前に別医療機関にてセカンドオピニオンを求めるも,同様の判断であった。2カ月前より右鼻閉が更に増悪したため,精査加療目的に岡山大学病院耳鼻咽喉科を紹介受診となる。CTおよびMRIにて,右鼻腔内に右眼窩壁および頭蓋底を圧排する骨硬化性病変を認めた。患者の希望が鼻閉の改善であること,また完全切除には合併症のリスクが高いため,内視鏡下にFDの部分切除を施行した。減量手術にて病変の内部成分を減量した後,外殻成分を周囲から剥離し切除した。術後は合併症を認めず鼻腔は開存し,鼻閉の改善における患者満足度も十分に得られた。
【考察とまとめ】頭蓋顎顔面FDの治療法は,病変の部位,手術に伴う侵襲性,および治療の目的などを考慮して選択する必要がある(Chen YRら,Plast Reconstr Surg 1990)。減量手術は鼻副鼻腔FDの部分切除を施行するにあたって,有効かつ安全な方法と思われた。

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