日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
原著
当院におけるEndoscopic Modified Lothrop Procedureの検討
南 和彦土師 知行
著者情報
キーワード: 前頭洞病変, EMLP, 再狭窄, 粘膜弁
ジャーナル フリー

2014 年 53 巻 4 号 p. 499-505

詳細
抄録

前頭洞は他の副鼻腔と比べて自然排泄路である鼻前頭管が長く開口部も狭小であるため,副鼻腔炎などの病的変化が生じると容易に通過障害をきたす。前頭洞病変に対するアプローチは鼻外手術からendoscopic sinus surgery(ESS)へと変遷してきたが,鼻前頭管は頭蓋底や眼窩など解剖学的危険部位に囲まれており,前頭洞を鼻腔へと開放する範囲には限界がある。さらに,前頭陥凹の骨や粘膜の不適切な手術操作も鼻前頭管が閉塞する原因となり,前頭洞炎の再燃や術後性嚢胞の発生原因となる。このため,近年は鼻堤と鼻中隔,前頭洞底の骨削開を行い,両側の前頭洞を単洞化することにより前頭洞を大きく開放してドレナージを行う術式であるEndoscopic Modified Lothrop Procedure(EMLP)が難治性・再発性前頭洞病変に対して施行されるようになっている。当院でEMLPを施行した前頭洞病変5例について検討した。1例で術中にわずかな髄液漏を認めたが,その他に重篤な合併症は認めず,術後に前頭洞口の再閉鎖をきたしたり再手術を要した症例はなかった。一方で新たに作成された排泄路の骨増生による再狭窄が最大の問題であり,骨を削開する際にできるだけ周囲の粘膜を温存し,手術終了時に骨面の露出を避けるように骨を粘膜弁等で被覆する必要があると考えられた。EMLPは短期的には難治性・再発性前頭洞病変に対する有効な術式であると考えられるが,引き続き長期的な経過観察が必要である。

著者関連情報
© 2014 日本鼻科学会
次の記事
feedback
Top