抄録
鼻副鼻腔腫瘍のなかでも鼻中隔に発生する腫瘍は,良悪性にかかわらず稀である。なかでも鼻中隔扁平上皮癌は特に頻度は低いが,特定の職種や喫煙者に多く発生するなどの疫学的特徴を有し,field cancerizationすることがしられている。そのため,本疾患の発症前にすでに悪性疾患の治療が行われていることが多く,治療には制限が生じたり,工夫を要することがある。今回我々は頭頸部扁平上皮癌に対してすでに先行治療が施されていた本疾患を2例経験し,個々の病態に応じた治療を選択した。いずれも頭頸部癌術後の鼻腔内視鏡検査で病変を早期に発見できたため,頭頸部癌術後の患者に対して普段から本疾患を念頭にいれて鼻腔内視鏡検査での観察を行うことが肝要であると考えられた。