日本鼻科学会会誌
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原著
外転神経単独麻痺で発症した後部篩骨洞嚢胞例
若杉 亮石岡 孝二郎池田 良佐々木 崇暢池田 正直奥村 仁堀井 新
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2017 年 56 巻 1 号 p. 1-6

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抄録

副鼻腔嚢胞による視器障害は視力障害,外眼筋麻痺,眼運動神経麻痺に大別されるが,外転神経麻痺単独で発症することは非常に稀である。今回我々は,術後性後部篩骨洞嚢胞に起因する外転神経単独麻痺から複視を来した症例を経験した。症例は75歳男性で,左眼周囲の疼痛,複視のため,眼科受診し,CT,MRIにて左最後部篩骨洞に最大径30mmの軟部組織陰影を認め,当科紹介となった。画像上,蝶形骨の左上壁および左外側壁に骨欠損像を認め,一部で病変と海綿静脈洞の境界が不明瞭になっている所見を認めた。当院眼科の視機能評価では,8年前の視力と比べ視力低下は認めず,Hess赤緑試験では左外側直筋単独麻痺を認めた。20代で左慢性副鼻腔炎の手術歴があり,術後性後部篩骨洞嚢胞による左外転神経単独麻痺と診断し,全身麻酔下に内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した。嚢胞からは膿性ではない粘液性内容物が漏出し,感染徴候は認めなかった。術後約2か月で左外転神経麻痺の改善を認めた。本症例では,嚢胞が海綿静脈洞内側下方へ進展したため解剖学的位置関係から動眼神経や滑車神経は正常で,外転神経のみ障害を受けたのではないかと考えられた。

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