日本鼻科学会会誌
Online ISSN : 1883-7077
Print ISSN : 0910-9153
ISSN-L : 0910-9153
56 巻, 1 号
選択された号の論文の52件中1~50を表示しています
追悼文
原著
  • 若杉 亮, 石岡 孝二郎, 池田 良, 佐々木 崇暢, 池田 正直, 奥村 仁, 堀井 新
    2017 年 56 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー

    副鼻腔嚢胞による視器障害は視力障害,外眼筋麻痺,眼運動神経麻痺に大別されるが,外転神経麻痺単独で発症することは非常に稀である。今回我々は,術後性後部篩骨洞嚢胞に起因する外転神経単独麻痺から複視を来した症例を経験した。症例は75歳男性で,左眼周囲の疼痛,複視のため,眼科受診し,CT,MRIにて左最後部篩骨洞に最大径30mmの軟部組織陰影を認め,当科紹介となった。画像上,蝶形骨の左上壁および左外側壁に骨欠損像を認め,一部で病変と海綿静脈洞の境界が不明瞭になっている所見を認めた。当院眼科の視機能評価では,8年前の視力と比べ視力低下は認めず,Hess赤緑試験では左外側直筋単独麻痺を認めた。20代で左慢性副鼻腔炎の手術歴があり,術後性後部篩骨洞嚢胞による左外転神経単独麻痺と診断し,全身麻酔下に内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した。嚢胞からは膿性ではない粘液性内容物が漏出し,感染徴候は認めなかった。術後約2か月で左外転神経麻痺の改善を認めた。本症例では,嚢胞が海綿静脈洞内側下方へ進展したため解剖学的位置関係から動眼神経や滑車神経は正常で,外転神経のみ障害を受けたのではないかと考えられた。

  • 三橋 亮太, 三橋 拓之, 梅野 博仁
    2017 年 56 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー

    術後性副鼻腔嚢胞は発生部位や周囲臓器との位置関係に非常にバリエーションが多く,斜視鏡を用いても視野がとれずに手術操作が困難となる症例が存在する。近年,このような症例に対してEndoscopic modified medial maxillectomy(EMMM)の有用性が報告されている。今回,われわれは鼻涙管外側に位置する小さな術後性上顎嚢胞に対して,嚢胞の開窓を行ったが再閉塞をきたしたため,EMMMによる嚢胞摘出にて治療し得た1例を経験した。症例は64歳女性で,右頬部痛を主訴に来院した。20歳時に両側歯齦部からの上顎洞手術を受けていた。CTで下鼻道に接する直径20mmの嚢胞病変および,鼻涙管の外側,眼窩下神経の内側に接する直径10mmの嚢胞病変を認めた。初回手術は,局所麻酔下に下鼻道に接する嚢胞の開放を行った。一時的に痛みは消失したが,8か月後に疼痛が再燃したため,全身麻酔下にナビゲーションを併用し,鼻涙管外側の骨性嚢胞壁をドリルで削開し中鼻道に開窓した。嚢胞開窓部には中鼻道の粘骨膜弁を落とし込み,再狭窄の予防としたが,1か月後に症状の再燃を認めた。再度ナビゲーションを併用しEMMMで嚢胞の完全摘出を行った。術後19か月目の時点で,再発は認めていない。鼻涙管外側の小さな骨性嚢胞に対するEMMMでの嚢胞壁の完全摘出の有用性が示唆された。

  • 小池 健輔, 大橋 充, 宮崎 純二
    2017 年 56 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー

    一般耳鼻科外来における異物症例は,新患総数のうち約0.5–2%で,そのうち鼻腔異物は10–20%程度とされ,副鼻腔異物となると非常に稀である。今回,副鼻腔異物の中でも数少ない前頭洞箸異物の症例を経験した。症例は27歳男性。深夜に泥酔し顔面を殴打され受傷した。疼痛と断続的に鼻出血が持続し当院救急外来を受診したが,異物は指摘されず後日耳鼻科受診を指示し帰宅させた。しかし,鼻閉が続くため受傷5日後に近医耳鼻科を受診,鼻内異物を指摘されたため当科を受診した。鼻内から前頭洞に向かい刺入する棒状異物を認め,ただちに経鼻内視鏡下に異物摘出術を施行した。異物はプラスチック製箸であった。渉猟した過去の報告例ではすべて直達性の異物陥入で,鼻腔経由に陥入した前頭洞異物は自験例が本邦で初の報告例と考えられた。箸は頭蓋底を損傷せず前頭洞内に入り込むことで頭蓋内損傷が回避されたが,これは異物の刺入部位・角度,素材,形状など複数の要因が寄与していると推測した。また,自験例は救急外来受診時に異物を見過ごしているが,過去の前頭洞異物報告例においてもガラスなど耐腐食性かつX線透過性異物が大部分であり見過ごされやすいことが指摘されている。とりわけ,鼻出血や外傷患者においては異物の可能性を念頭に置き,病歴・症候から異物が疑われる場合,CT等を活用し確実な診断を心がける必要があると認識した。

第55回日本鼻科学会総会・学術講演会
第23回日本鼻科学会賞受賞講演
  • 都築 建三
    2017 年 56 巻 1 号 p. 18-28
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/04/28
    ジャーナル フリー

    慢性副鼻腔炎(chronic rhinosinusitis, CRS)に対する内視鏡下副鼻腔手術(endoscopic sinus surgery, ESS)症例において,術後の治療は非常に重要である。術後の治療をより適切に行うためには,鼻副鼻腔領域の評価が重要になる。その評価には画像検査が最も正確で有用であるが,全例に経時的に行うことは困難である。そこで我々は,手術を行った鼻副鼻腔領域の術後の内視鏡所見に関して術後内視鏡スコア(Eスコア)を提唱した。まず手術(ESS)により開放した副鼻腔と嗅裂部の内視鏡所見をそれぞれ,異常なし(0点),貯留物・粘膜腫脹があるも観察可能な部分閉塞(1点),観察不能な完全閉塞(2点)と点数化し,その合計点を求める(開放しなかった副鼻腔は除外する)。その最高点(各部位がすべて完全閉塞2点と仮定した合計点)に対する割合がEスコア(%)である。Eスコアは,手術により開放した副鼻腔および嗅裂部の内視鏡所見を評価する一つのスコアリングシステムである。当科の検討おいて,Eスコアは評価者間信頼性が高く,鼻腔内視鏡スコア(Lund-Kennedy system)および鼻副鼻腔CTスコア(Lund-Mackay system)との有意な相関性を認め,簡易にできる有用な術後の評価法の一つであることが示唆された。ただし,ポリープの再発などにより内視鏡下に副鼻腔が十分に観察できない症例においては,EスコアはCTスコアとの乖離が生じやすいため,正確な評価のためにCT検査が必要となる。今後も,内視鏡スコアの長所を活かし,容易で誤差の少ない評価法を確立させることが課題となる。

招待講演1
招待講演2
韓国鼻科学会スペシャルレクチャー
シンポジウム1
シンポジウム2
パネルディスカッション1
パネルディスカッション2
パネルディスカッション3
日韓セッション
International Session 1
International Session 2
女性医師セミナー
専門医領域講習 アフタヌーンセミナー
専門医領域講習 手術手技セミナー
feedback
Top