日本鼻科学会会誌
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原著
粘膜下下鼻甲介骨切除術を併施した後鼻神経切断術の治療成績と手術適応の検討
鈴木 成尚藤岡 正人荒木 康智川浦 光弘國弘 幸伸小川 郁
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2018 年 57 巻 2 号 p. 130-137

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抄録

2012年10月から2015年3月に後鼻神経切断術を施行した症例の治療成績および合併症について後方視的検討を行った。

治療効果の評価には鼻アレルギー診療ガイドライン2016の重症度分類の症状アンケートを用い,くしゃみ・鼻汁・鼻閉および日常生活の支障度の4項目(0–4点の5段階のスコア)について定量的に評価した。手術を施行した44例中33例から回答が得られ,スコアの変化,有効率,薬剤使用割合,合併症について検討した。観察期間は平均10.0±6.4ヶ月間であった。術式は中鼻道経由で蝶口蓋動脈基部からの後鼻神経切断術であり,全例に粘膜下下鼻甲介骨切除術を,また必要な症例には鼻中隔矯正術も併施した。

術前・術後のスコアはくしゃみ1.84→0.69,鼻汁2.28→1.00,鼻閉2.94→0.63,日常生活支障度2.31→0.66と低下を認めた。スコア1以上の改善を「有効」とした際の有効率はくしゃみ65.6%,鼻汁78.1%,鼻閉93.8%,日常生活支障度93.8%であった。薬剤常用者の割合は術前84.1%から術後20.5%に減少した。術前スコア「各1点,2点,3点,4点」以上を境界に分類すると,有効率はくしゃみ「77.8%,94.1%,100%,100%」,鼻汁「78.1%,95.7%,100%,100%」となった。再手術を要した術後出血は2例2側(3.0%)だった。

後鼻神経切断術は通年性アレルギー性鼻炎患者の症状および日常生活の支障度を改善する有効な治療法と考えられた。薬剤使用割合を減少させることが期待され,特に症状スコア2以上のくしゃみ,鼻汁を訴える症例には良い適応と考えられた。

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