日本鼻科学会会誌
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原著
鼻内視鏡下に摘出しえた6例の上顎洞血瘤腫の報告
関根 基樹金田 将治斎藤 弘亮山本 光飯田 政弘
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2018 年 57 巻 2 号 p. 159-165

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抄録

上顎洞血瘤腫は,上顎洞に陳旧様々な血液成分が貯留して腫瘤状に拡大する臨床上診断名である。疾患の特異性から通常の炎症性疾患や乳頭腫のような腫瘍性疾患とは異なる手術手技が必要だが,その詳細を示した報告は少ない。内視鏡下手術を行った上顎洞血瘤腫6例を示し,手術手技の詳細について報告する。

年齢は14歳~68歳で男性3例,女性3例であった。術前に血管塞栓術を行った症例はなかった。すべての手術はESSで行い,5例は中鼻道経由のみで,1例はendoscopic modified medial maxillectomyによるアプローチで行った。手術時間は71分~106分で,出血量は全て100ml以下だった。

【手術法】鼻腔側に膨隆する部位を鼻涙管の位置に注意して粘膜切開する。内部の腫瘤と洞粘膜との間にガーゼを入れ,剥離をすすめる。外側や前壁,下壁方向は彎曲した鉗子や吸引管を用いて,ガーゼをまわしこむようにして腫瘤周囲に入れていくことで,周囲壁から腫瘤を挙上する。鼻腔側に腫瘤を出した時点で超音波凝固装置を用いて分割切除する。流涙がある症例では,術中に涙道通水検査を行う。

上顎洞血瘤腫の内視鏡下手術手技の詳細を述べた。適切なデバイスを併用することで出血の制御が可能であり,術前血管塞栓術を必要とする症例はなかった。流涙がある症例では,術中に涙道評価を行う。

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