日本鼻科学会会誌
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原著
鼻腔に発生したリン酸塩尿性間葉系腫瘍(phosphaturic mesenchymal tumor)例
宮田 遼松宮 弘佐々木 彩花吉岡 巌
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2018 年 57 巻 4 号 p. 565-571

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抄録

リン酸塩尿性間葉系腫瘍(phosphaturic mesenchymal tumor: PMT)は,線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)を分泌し,腫瘍性骨軟化症(tumor-induced osteomalacia: TIO)の原因となる稀な腫瘍である。FGF23は腎尿細管におけるリンの再吸収および腸管におけるリンの吸収を抑制する機能を有するため,過剰なFGF23は低リン血症を来し,骨軟化症を引き起こす。症例は73歳男性で,主訴は胸と足の痛みであった。高アルカリフォスファターゼ(ALP)血症,低リン血症が認められ,骨シンチグラフィーでは肋骨,胸腰椎,腸骨,足根骨に集積を認め,骨軟化症が疑われた。全身CTで左鼻腔に異常な腫瘤陰影を認められた。鼻外からの前頭洞開放を併用して内視鏡下に腫瘍を切除した。病理学的診断はphosphaturic mesenchymal tumor, mixed connective tissue variant(PMT-MCT)であった。手術後,血清リンおよび血清FGF23は速やかに正常化した。胸と足の痛みは手術の5ヶ月後に改善した。手術3年後,血清ALPは正常化し,腫瘍の再発は認めていない。

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