日本鼻科学会会誌
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原著
当科におけるスギ花粉症に対する舌下免疫療法患者の検討
大西 恵子川島 佳代子山戸 章行安井 俊道
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2018 年 57 巻 4 号 p. 572-580

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抄録

【はじめに】スギ花粉症に対する舌下免疫療法は,保険適応になり3年が経過し徐々に施行患者が増加している。今回2014年から2016年にスギ舌下免疫療法を開始した患者を対象に,症状・QOLについて検討した。

【対象と方法】2014年から2016年に大手前病院でスギ花粉症に対し舌下免疫療法を開始した患者を対象に,2017年スギ花粉飛散期に日本アレルギー性鼻炎標準QOL調査票を用い,症状スコア・QOLスコアについて調査した。同時期にスギ花粉飛散期より1週間以上前から抗ヒスタミン薬を内服している患者を調査し比較検討した。また2014年に開始した患者については,経年的な検討を行った。

【結果】大阪では3シーズンにわたりスギ花粉の飛散数は少量飛散であった。2017年のスギ花粉飛散期に薬物療法群と比較し舌下免疫療法群では,症状スコア・QOLスコア・鼻症状薬物スコアは低値であった。鼻症状薬物スコアは,2014年開始群では有意に低値であった。2014年開始群については,各々のスコアで2015年より2016年・2017年で経年的に低下傾向を認めた。2017年における各群の舌下免疫療法の継続率は87.2%から90.9%と高かった。

【考察】スギ舌下免疫療法患者の3シーズンの症状スコア・鼻症状薬物スコアは有意に低下していたが,QOLスコアは低下傾向のみだった。スギ花粉数が少量であったことも関連している可能性があり,大量飛散年の検討も必要である。また長期間の継続が必要であり,今後中止する患者を含め有効性の長期観察が必要である。

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