日本鼻科学会会誌
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原著
嗅覚障害患者の長期予後と神経変性疾患の発症について
弦本 結香森 恵莉関根 瑠美杉田 佑伊子鄭 雅誠倉島 彩子鴻 信義小島 博己
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2019 年 58 巻 1 号 p. 47-53

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抄録

【背景と目的】嗅覚障害は神経変性疾患の早期診断や,生命予後の予測因子として着目されている。今回嗅覚障害患者の予後や神経変性疾患の発症の有無について調査したので報告する。

【対象と方法】2009年4月から2012年3月までに当院嗅覚外来を受診した患者を対象にアンケート調査を施行した。調査票の送付は2016年12月から2017年3月までに行い,2017年5月1日を回収期限とした。質問項目は嗅覚障害の現状のVisual Analog Scale・当院受診後に新たに診断された疾患・現在の生存の有無とした。

【結果】該当した228例のうち,住所が特定できた167例に対して調査票を送付した。91例から返信があり,研究に同意の得られた86例(男性34例・女性52例,平均年齢58.3歳)を分析対象とした。回答患者の嗅覚障害原因疾患の割合は,慢性副鼻腔炎が43%で最も多く,感冒後嗅覚障害が22%,外傷性が6%と続き,原因不明は13%であった。神経変性疾患の新規発症は2例で,いずれも発症疾患はパーキンソン病であり,原因不明の嗅覚障害患者であった。死亡は2例で,両者ともに悪性疾患を罹病していた。

【結論】今回の調査では原因不明の嗅覚障害11例中2例がパーキンソン病を発症していた。嗅覚障害の原因が不明であった場合は,神経症状も含めた経過に注意が必要であり,神経内科への依頼も検討すべきと考えられた。

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