日本鼻科学会会誌
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原著
片側の鼻腔ステント留置と経鼻ハイフロー療法が有効であった気管挿管を要した先天性梨状口狭窄例
大塚 雄一郎根本 俊光晝間 清山崎 一樹花澤 豊行長谷川 久弥
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2022 年 61 巻 1 号 p. 118-123

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抄録

先天性梨状口狭窄は非常にまれな疾患で,呼吸困難や哺乳不良や鼻閉を呈し,重症例では気管挿管と経管栄養を要する。CTで梨状口の最小幅が11 mm未満であれば先天性梨状口狭窄と診断される。手術報告もあるが手術は侵襲が大きく,本邦ではステント留置などの保存的治療が主体である。今回我々は哺乳障害と呼吸障害のため気管挿管を要した重症の先天性梨状口狭窄例を経験した。症例は日齢3日の男児。出生直後から鼻閉と哺乳障害と陥没呼吸を認め,経鼻胃管が挿入できなかった。CTで梨状口の最小幅は5.0 mmと狭窄を認めた。気管挿管と経管栄養により呼吸状態と栄養状態の改善を図り,日齢17日に右鼻腔にステントを留置した。日齢19日に気管挿管が自然脱落した。ステント留置側の反対側からの経鼻ハイフロー療法(HFNT)により,呼吸状態・哺乳状態は安定して体重は順調に増加した。鼻腔が拡大し日齢39日に鼻腔ステントを抜去したが,その後もHFNTを必要とした。日齢109日には両側鼻腔が拡大し,日齢124日でHFNTを離脱した。

気管挿管を要する重症例であっても保存的治療で改善を図ることが可能であった。特にHNFTは従来の経鼻持続陽圧呼吸(NCPAP)に比べて利点が多く,保存的治療の適応拡大や早期抜管が見込まれる。また先天性梨状口狭窄例のステント抜去のタイミングは適当な指標がなく,まとまった報告が求められる。

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