日本鼻科学会会誌
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61 巻, 1 号
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基礎研究プロトコール集
原著
  • 藤尾 久美, 荻野 枝里子, 中川 隆之
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    嗅覚同定検査にスティック型嗅覚検査法(OSIT-J)とオープンエッセンス(OE)がある。これらは検査手順が異なるが,同じ12嗅素で構成されており,近年,広く臨床研究に利用されるようになってきた。今回,我々はこの二つの検査に一致性があるかを検討した。嗅覚正常と自覚している20歳以上40歳未満の男女各10名,全20例の健常ボランティアを対象とし1群は初回にOSIT-J,2週間後にOEを施行し,2群は逆の順で検査を行った。結果:ボランティアの平均年齢32.1歳,男性32.7歳,女性31.4歳で男女間に有意差は認めなかった(P=0.56)。OSIT-Jの平均値は11.0(中央値11.0,95%CI:10.6~11.6),OEは10.7(中央値11.0,95%CI:10.1~11.2)で,両検査平均値,中央値ともに95%CIに含まれた。嗅素別の正答率は12嗅素中,カレーのみ両検査ともに100%であった。同一被検者において,両検査間の同定(正答)・非同定(誤答)嗅素の一致率は,同定(正答)で100%一致した症例は5/20例,非同定(誤答)では1/16例であった。以上の結果より,2検査間でスコアは互換性があると考えられるが,同一被検者で調べると,同定嗅素・非同定嗅素は必ずしも一致しないことから,嗅素に関しては,互換性はないと考えられた。診断としての同定スコアは両者共用で用いることができるが,嗅素間の比較は難しいと思われる。

  • 平澤 一浩, 大塚 康司, 吉野 高一郎, 塚原 清彰
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    歯性副鼻腔炎は,歯性感染が上顎洞や他の副鼻腔へ波及した疾患である。原因歯に対する治療と保存的治療を行っても改善が乏しい場合には,内視鏡下鼻副鼻腔手術が適応となる。しかしながら,全身状態や既往症の問題から手術を行えない例や,手術を希望しない例も時に経験し,治療に苦慮する。今回,葛根湯加川芎辛夷と桔梗石膏を併用投与し著明に改善した歯性副鼻腔炎の一例を経験した。症例は59歳女性。半年前から右膿性鼻汁と鼻閉が出現し,歯性副鼻腔炎の診断で抜歯と抗菌薬治療を行ったが改善不良であった。内視鏡下鼻副鼻腔手術を検討したが,制御不良の糖尿病があり行えなかった。葛根湯加川芎辛夷と桔梗石膏を併用投与したところ,投与後から膿性鼻汁が顕著に増えたと自覚あり。13週後,症状および所見ともに消失し,上顎洞と一部の篩骨蜂巣の開口部が手術後のように開大していた。

  • 平岡 美菜, 松見 文晶, 橋本 千織, 室野 重之
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 1 号 p. 110-117
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    Chondro-osseous respiratory epithelial adenomatoid hamartoma(COREAH)は鼻副鼻腔に発生する骨軟骨化生を伴う稀な過誤腫である。今回われわれは中咽頭まで伸展したCOREAH例を経験したので報告する。

    症例は60歳男性。主訴は両鼻閉。5–6年前より鼻汁・両鼻閉・嗅覚低下があり,近医内科より精査目的に当科紹介となった。鼻咽腔内視鏡検査では両側後鼻孔を閉塞する表面平滑な腫瘤を認め,口腔内からも腫瘤が観察された。副鼻腔単純CTでは後鼻孔から中咽頭にまで及ぶ内部に粗大な石灰化を伴う62×18 mm大の辺縁平滑な腫瘤影を認め,造影MRIでは腫瘤に造影効果を認めたが,中心部には造影効果を認めなかった。腫瘤の組織検査ではnasal polypと診断されたが,画像所見からは腫瘍は否定できず,全身麻酔下に左鼻腔腫瘍摘出術,左ESS,鼻中隔矯正術を施行した。左鼻腔腫瘤は鼻中隔左側後上方から蝶形骨洞自然口尾側を基部とする有茎性で,基部を切除し口腔内から摘出した。病理組織検査では呼吸上皮や分泌腺,脂肪髄を含む骨組織を有する過誤腫でCOREAHと診断された。術後鼻閉は消失し,術後2年経過しているが再発は認めていない。過去のCOREAHの報告例では,治療が部分切除にとどまった症例では再発をきたしたものがあったが,分割切除でも再発なく経過している例も認めた。治療は病変の可及的切除であり,術前診断は難しい場合もあるが,過大侵襲的な手術を避けるためにも内反性乳頭腫や腺癌など他の腫瘍性病変との鑑別が重要である。

  • 大塚 雄一郎, 根本 俊光, 晝間 清, 山崎 一樹, 花澤 豊行, 長谷川 久弥
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 1 号 p. 118-123
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    先天性梨状口狭窄は非常にまれな疾患で,呼吸困難や哺乳不良や鼻閉を呈し,重症例では気管挿管と経管栄養を要する。CTで梨状口の最小幅が11 mm未満であれば先天性梨状口狭窄と診断される。手術報告もあるが手術は侵襲が大きく,本邦ではステント留置などの保存的治療が主体である。今回我々は哺乳障害と呼吸障害のため気管挿管を要した重症の先天性梨状口狭窄例を経験した。症例は日齢3日の男児。出生直後から鼻閉と哺乳障害と陥没呼吸を認め,経鼻胃管が挿入できなかった。CTで梨状口の最小幅は5.0 mmと狭窄を認めた。気管挿管と経管栄養により呼吸状態と栄養状態の改善を図り,日齢17日に右鼻腔にステントを留置した。日齢19日に気管挿管が自然脱落した。ステント留置側の反対側からの経鼻ハイフロー療法(HFNT)により,呼吸状態・哺乳状態は安定して体重は順調に増加した。鼻腔が拡大し日齢39日に鼻腔ステントを抜去したが,その後もHFNTを必要とした。日齢109日には両側鼻腔が拡大し,日齢124日でHFNTを離脱した。

    気管挿管を要する重症例であっても保存的治療で改善を図ることが可能であった。特にHNFTは従来の経鼻持続陽圧呼吸(NCPAP)に比べて利点が多く,保存的治療の適応拡大や早期抜管が見込まれる。また先天性梨状口狭窄例のステント抜去のタイミングは適当な指標がなく,まとまった報告が求められる。

  • 御厨 剛史, 田中 成幸, 佐藤 有記, 武富 弘敬, 倉富 勇一郎
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 1 号 p. 124-130
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    抗血栓薬投与を受けている手術患者では,投薬継続に伴う出血のリスクと投薬中止による血栓リスクのバランスをとることが重要である。しかし,耳鼻咽喉科領域の処置や手術における抗血栓薬中止の是非を検討した報告や休薬に関するエビデンスは少ない。そこで周術期における抗血栓薬投与の鼻内手術に対する影響を検討した。2014年から2019年9月の期間に当施設で行った内視鏡下鼻内手術症例770例を対象とした。内科主治医の評価と意見を参考に最終的に患者の意思を尊重し,抗血栓薬を継続する「継続群」と,休薬を行う「休薬群」の2群を設定した。抗血栓薬を内服していた例は30例で,継続群21例(男性21例,中央値67歳,51–82歳),休薬群9例(男性8例,女性1例,中央値67歳,60–89歳)であった。2群間の術中出血量,手術時間,術後出血率については各項目に有意差は認めなかったが,休薬群で出血率が高く術後出血が遅くなる傾向がみられた。両群ともに血栓症や輸血が必要な症例は認めなかった。抗血栓薬内服歴がある30例中4例(13.3%)に後出血を認め,内服歴のない740例中9例(1.2%)に後出血を生じたのと比較し約11倍に出血率が上昇したが,通常のパッキング等の処置で対応可能であった。抗血栓薬継続下の手術は上記結果を説明し同意が得られれば,休薬に伴う血栓リスクを軽減できる有用な方法と考えた。

  • 神人 彪, 乾 崇樹, 寺田 哲也, 鈴木 英佑, 谷内 政崇, 尾崎 昭子, 鈴木 倫雄, 鈴木 学, 荒木 倫利, 河田 了
    原稿種別: 原著
    2022 年 61 巻 1 号 p. 131-140
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/28
    ジャーナル フリー

    オスラー病は遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)とも呼ばれ,常染色体顕性遺伝,皮膚や多臓器の多発性毛細血管拡張,反復する鼻出血を3主徴とする多臓器疾患である。当科で鼻出血の制御を目的として入院加療を要したHHT患者3例を経験したため,その治療内容や経過をまとめ報告する。

    症例1は30歳女性で,数か月おきにレーザー凝固術を繰り返すことで鼻出血のコントロールを行った。症例2は74歳女性で,肝臓と肺に動静脈奇形の合併に加えて,原因不明とされる脳出血の後遺症を伴っていた。意思疎通ができず,安静が保てないために止血に難渋し,選択的動脈塞栓術を行った。症例3は64歳男性で,多量の鼻出血を繰り返すため鼻粘膜皮膚置換術を行った。術後も鼻出血は反復するものの,頻度や量の改善が見られた。

    HHTはほとんどの症例で反復する鼻出血を生じるため,耳鼻咽喉科医が果たす役割は幅広く,鼻出血のコントロールによるQOLの向上だけでなく,診断や合併する疾患に対する専門科受診の橋渡しもしなければならない。しかし,耳鼻咽喉科で見逃されていることも多い疾患であるという認識も必要である。今回の3例も初発症状から診断まで時間が経っており,うち2例は当科で鼻出血の治療歴もあったがHHTの診断に至らなかった。反復する鼻出血を来す疾患としてHHTがあることを念頭におき,HHTを疑う場合は鼻内局所の所見だけではなく,口腔粘膜・手指の観察と家族歴の詳細な問診を忘れてはならない。

第60回日本鼻科学会総会・学術講演会
日本鼻科学会60周年記念式典・記念講演
会長講演
日本鼻科学会賞授賞式・記念講演
日本鼻科学会60周年記念シンポジウム:鼻科学の発展と未来
特別講演
国際化プログラム1 ベーシックコース
国際化プログラム2 アドバンスコース
日韓シンポジウム
鼻科学会シンポジウム1:小児の嗅覚障害
鼻科学会シンポジウム2:鼻副鼻腔悪性腫瘍の基礎と臨床
共通講習 感染対策 鼻科学会シンポジウム3:COVID-19への対応
共通講習 医療安全
鼻科学会シンポジウム4:小児の鼻科疾患診療に役立つhints and tips
鼻科学会シンポジウム5:内視鏡下鼻副鼻腔手術の適応拡大とその限界
鼻科学会シンポジウム6:舌下免疫療法の最前線
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