オスラー病は遺伝性出血性毛細血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)とも呼ばれ,常染色体顕性遺伝,皮膚や多臓器の多発性毛細血管拡張,反復する鼻出血を3主徴とする多臓器疾患である。当科で鼻出血の制御を目的として入院加療を要したHHT患者3例を経験したため,その治療内容や経過をまとめ報告する。
症例1は30歳女性で,数か月おきにレーザー凝固術を繰り返すことで鼻出血のコントロールを行った。症例2は74歳女性で,肝臓と肺に動静脈奇形の合併に加えて,原因不明とされる脳出血の後遺症を伴っていた。意思疎通ができず,安静が保てないために止血に難渋し,選択的動脈塞栓術を行った。症例3は64歳男性で,多量の鼻出血を繰り返すため鼻粘膜皮膚置換術を行った。術後も鼻出血は反復するものの,頻度や量の改善が見られた。
HHTはほとんどの症例で反復する鼻出血を生じるため,耳鼻咽喉科医が果たす役割は幅広く,鼻出血のコントロールによるQOLの向上だけでなく,診断や合併する疾患に対する専門科受診の橋渡しもしなければならない。しかし,耳鼻咽喉科で見逃されていることも多い疾患であるという認識も必要である。今回の3例も初発症状から診断まで時間が経っており,うち2例は当科で鼻出血の治療歴もあったがHHTの診断に至らなかった。反復する鼻出血を来す疾患としてHHTがあることを念頭におき,HHTを疑う場合は鼻内局所の所見だけではなく,口腔粘膜・手指の観察と家族歴の詳細な問診を忘れてはならない。
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