2006 年 55 巻 1 号 p. 18-24
症例は55歳,男性。平成15年7月7日頭痛,発熱,湿性咳のため近医を受診したが改善なく,7月11日胸部レントゲンで異常影が認められたため,同日当科を紹介され入院となった。一般市中肺炎を考え治療を開始したが,重篤な低酸素血症の出現と胸部X線の急速な異常影の両側への拡大が出現し,急性呼吸窮迫症候群 (ARDS) と考えた。原因疾患を尿中抗原や血清抗体によりレジオネラ肺炎と診断できた。急性腎不全,ショックも合併したが人工呼吸管理を11日間で離脱でき,9月9日退院となった。本症例のようにARDS,急性腎不全,ショックをきたしたレジオネラ肺炎の死亡率は高く50~80%と報告されているが,この様な病態に好中球エラスターゼ阻害薬やステロイドの投与が有効であったと考えられた。