日本農村医学会雑誌
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原著
地域医療における造血器腫瘍の実態とその対策: (第1報) 高齢化に伴う造血器腫瘍および他の固形癌の実態とその変化の解析
森山 美昭漆山 勝小林 勲
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2006 年 55 巻 4 号 p. 367-375

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抄録

 高齢化が急速に進む地域医療では,その対策は深刻である。今後,造血器腫瘍患者も高齢化し,かつ,腫瘍別発症頻度の変化も想定され,新たな治療法の開発が必要になると思われる。今回,高齢化が進む新潟県柏崎地区 (柏崎保健所管内) における造血器腫瘍と他の固形癌 (死亡例) の頻度と年齢分布を解析し,地域における造血器腫瘍の実態とその特徴を明らかにすることを目的とした。
 過去10年間,当院で経験した造血器腫瘍: 293例 (AML: 52例,NHL: 112例,MDS: 75例,MM: 40例,その他: 14例) と死亡: 127例を解析の対象とした。一方,柏崎地区における20年間の人口動態,固形癌死亡例の年代別頻度とその推移を調査し,データは全てコンピュータで解析した。
 柏崎地区では,20年間で高齢化率は2倍となり,固形癌死亡例のピークは70代後半 (後期高齢者) へと移行し,かつ,死亡例は1.6倍に増加した。胃癌は減少し,肺癌と大腸・直腸癌が著しく増加し,癌発症頻度の変化も認めた。固形癌と同様,造血器腫瘍も明らかに高齢化し,死亡例は1.7倍に増加し,10年間でNHLとMDSは1.5倍,特に,MMは約3倍に増加したが,急性白血病は増減なく,発症頻度も変化した。更に,造血器腫瘍の発症と死亡ピークは70代後半 (平均:74.6歳) へと移行し,従来の造血幹細胞移植 (ミニ移植を含め) で対応できない症例が実に6割強 (60.6%) に至り,かつ,高齢者の造血器腫瘍の予後は日本の平均寿命である80代健常者の平均余命と比較しても,著しく短く(P<0.001),その対策は急務と思われる。

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© 2006 一般社団法人 日本農村医学会
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