日本農村医学会雑誌
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原著
ブドウ果房管理作業における負担の実態
辻村 裕次垰田 和史北原 照代
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2011 年 60 巻 1 号 p. 1-17

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抄録

 ブドウ果房管理作業における頸肩部の負担は上肢系筋骨格系症状の発症要因となっている。負担軽減策の立案に資するために,現状のブドウ果房管理における作業負担の程度と要因を明らかにすることを目的として,滋賀県湖南地域でブドウを栽培している作業者を対象に,観察,聞き取り,ビデオ撮影による姿勢計測から作業分析を行ない,合わせて全身や局所の疲労状況を把握するための質問紙調査を,2009年の5月から6月にかけて実施した。
 作業者12人についての作業分析と47人日分の質問紙調査の結果から,作業位置の高さに起因する長時間で高頻度に繰り返された頸部後屈 (作業時間の82%) と上肢挙上保持 (左肘頭が肩より上方に位置した時間率56%) が大きな負荷となり,全身的な疲労や頸肩部の筋疲労を生じさせていたことが判明した。特に,頸部後屈や上肢挙上保持作業に慣れていない状況で行なう最も高い作業位置の「新梢の水平誘引」,「ジベレリン処理」における上肢へのジベレリン水溶液重量負荷,「第2回ジベレリン処理」による疲労が蓄積した状態で行なう最も困難度が高く長い時間を要する「摘粒」での負担が大きな問題であった。負担軽減策として,作業位置の低下 (樹木の仕立て方,足台の使用),頭部や上肢を支持する用具,「ジベレリン処理」における上肢への荷重負荷軽減,身体の使い方の工夫 (左右上肢の役割交替等) が考えられた。

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© 2011 一般社団法人 日本農村医学会
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