2012 年 61 巻 2 号 p. 69-76
高齢者の死亡に関する研究は生活習慣病が関与していることが多く報告されている。しかし,加齢に伴う身体機能や生活機能の虚弱が,生活習慣から独立して死亡に影響するか否かは十分に明らかになっていない。このため,高齢者の死亡への生活習慣と虚弱の関連を明らかにすることを目的に,島根県雲南市の生活機能の低下した新規の要支援認定高齢者 (軽度障がい高齢者) 66人と,生活自立している高齢者 (元気高齢者) 72人の2群について3年間の前向き調査を実施した。軽度障がい高齢者の死亡率は元気高齢者と比べ多い傾向であったが,有意差は認められなかった。すでに虚弱の進行した軽度障がい高齢者の死亡には,性 (男性が女性よりも有意に増加) のみが関連し,生活習慣や虚弱は関連していなかった。元気高齢者の死亡には,生活習慣の喫煙と虚弱要因の歩行障害が有意に関連していた。このように高齢者の死亡には,生活習慣と虚弱が独立して関連していることが明らかになった。