日本農村医学会雑誌
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原著
大腿骨近位部骨折例における段差昇降能力に影響を及ぼす要因
川端 悠士後藤 圭太武市 理史小川 浩司
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2015 年 63 巻 6 号 p. 986-994

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抄録

 本研究の目的は大腿骨近位部骨折例における段差昇降能力に影響を及ぼす要因を明らかにすることである。  当院へ入院加療となった大腿骨近位部骨折例75例のうち, 認知症老人の日常生活自立度がランクⅡ・Ⅲ・Ⅳ・Mに該当する14例, 入院前における障害老人の日常生活自立度がランクB・Cに該当する10例を除く51例を対象とした。51例を手すり使用条件における段差昇降の可否で可能群36例と不可群15例に, 手すり非使用条件における段差昇降の可否で可能群19例と不可群32例に分類した。調査・測定項目は年齢, 性別, 身長, 体重, 骨折型, 術後経過日数, 健患側等尺性股関節外転筋力, 健患側等尺性膝関節伸展筋力, 疼痛, 開眼継足立位時間, 脚長差, 20cm段差昇降の可否とした。はじめに調査・測定項目と段差昇降の可否との関連性ついて単変量解析を用いて分析した。その後に段差昇降の可否を従属変数, 単変量解析で段差昇降の可否との関連を認めた要因を独立変数として, 多重ロジスティック回帰分析を行なった。  段差昇降能力に影響を与える要因として, 手すり使用条件では健側膝関節伸展筋力と年齢が, 手すり非使用条件では健側膝関節伸展筋力と開眼継足立位時間が抽出された。  手すり使用での段差昇降動作獲得には健側膝関節伸展筋力の向上を, 手すり非使用での段差昇降動作獲得には健側膝関節伸展筋力向上に加えて静的立位バランス能力の向上を図る必要性が示唆された。

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© 2015 一般社団法人 日本農村医学会
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