日本農村医学会雑誌
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原著
外傷後の遅発性顔面神経麻痺の重症度と治癒までに要する期間の検討
冨士井 睦
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2015 年 64 巻 2 号 p. 107-113

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抄録

〔目的〕頭部外傷による錐体骨骨折後に, 遅発性顔面神経麻痺 (delayed facial palsy: DFP) を発症することがある。今回, 我々は顔面神経麻痺出現時に用いられるHouse-Brackmann grading system (HBS) に基づいた重症度とDFPの改善に要した期間との関連を後ろ向きに検討した。 〔対象と方法〕頭部外傷による錐体骨骨折282例のうちDFPを認めたのは33例であった。DFPの経過観察中に医学・美容上問題のないHBSⅡへ改善した時点を治癒とした。33例のDFPのうち最重症でもHBSⅡであった3例と顔面神経開放術を行なったHBSⅤの1例を除いた29例に対し, 麻痺の重症度とDFPの改善までの期間についてlog rank検定にて統計学的に検討した。 〔結果〕HBSⅤの重度群 (n=7) はHBSⅢ, Ⅳの中等度群 (n=22) に比べ統計学的有意に治癒期間が延長した (p=0.02)。後者は全例治癒に至り, 治癒に至るまでの中央値は50日, 前者では1年の経過観察後も2例で顔面神経麻痺は継続し, 治癒に至った5例の治癒に至るまでの日数の中央値は93日であった。 〔結語〕DFPはHBSによって予後予測が可能である事が示唆された。またDFPでもHBSⅤに至れば顔面神経麻痺を後遺する可能性がある。

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