日本農村医学会雑誌
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原著
急性期-亜急性期医療連携とpost-ICU(長期呼吸管理病棟)
高松 道生小林 俊夫平林 久美村岡 俊春
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2015 年 64 巻 4 号 p. 661-670

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抄録

 リハビリテーションを中心とする鹿教湯病院において急性期医療機関との前方連携の一環としてpost-ICU (長期呼吸管理病棟) を開設し, 2008年から2014年までの6年間に呼吸器を離脱できなかった呼吸不全例40例を長期呼吸管理目的で受け入れた。当初は20:1医療療養病棟での運営であったが重症例の増加に伴って医療的介入が求められるようになったため, 10:1一般病棟に移転して運営を継続した。呼吸不全の原因は心停止蘇生後低酸素脳症による中枢性換気不全が12例と最も多く, COPD, 神経難病, 頚髄損傷を加えると30例, 75%を占めた。呼吸管理期間は最短で脳幹腫瘍例の12日から, 最長は脳炎後遷延性意識障害例の6年に及び, 入浴や日光浴, 散歩など生活の場としての機能を付加しながら病棟運営を継続している。2014年診療報酬改定によって一般病棟における90日超えの特例が廃止されたため, 当該病棟を2014年5月から障害者施設等一般病棟に転換してpost-ICUの運営を継続している。2016年診療報酬改定にあたっては障害者施設等一般病棟について検討が加えられる事が中医協で確認されており, その存続が危ぶまれている。しかし, 高齢者人口の増加と救急医療の進歩による救命例の増加は蘇生後呼吸不全例増加の要因となる事が予想され, 長期呼吸管理部門の需要が減少する事は考えにくい。2025年問題に向けた地域包括ケアシステムの中で, 当該病棟が急性期医療機関との前方連携部門として機能する事が必要と考えられる。

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© 2015 一般社団法人 日本農村医学会
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