日本農村医学会雑誌
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秋田県における高齢化と救急搬送:総合診療部に期待されること
齊藤 崇作左部 大桑原 直行
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2016 年 65 巻 2 号 p. 178-183

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抄録
 我が国の少子高齢化が最も尖端的に現れているのが秋田県であり,深刻かつ慢性的なマンパワー不足にも拘わらず,超高齢化社会ゆえの病院負担が年々加速度的に増している。また,高齢者は複数の疾患を有し,認知症,転倒転落リスクなどの特性があり,これが救急現場から入院診療,退院へのパスが円滑に進まない要因ともなっている。  総合診療部門の設置はこうした問題を包括的に解決する処方箋として期待されたが,未だ大きな潮流となっているとは言い難い。当院では2012年,秋田県からの委託事業として救急・総合診療部をプラットホームとして秋田県総合診療・家庭医研修センターを開設して総合医育成に取り組み,現在まで6名の後期研修医を受け入れてきたが,直面する課題は少なくない。  第1は「総合診療医」のリソースである。本邦ではこれまで長い間大学の医局制と一体化した専門医指向型の医師育成がなされてきており,「総合」を指向する若手は未だ多くない。第2は「総合」の多義性に由来する問題である。同じ「総合診療医」とはいえ,①「救急」に軸足があるもの,②「病院総合医」,③診療所を拠点とし在宅診療に力点がある「家庭医」まで多彩で,しかも「病院総合医」は病院の規模や診療科構成により役割が異なり,比較的大規模で各診療科が揃った病院での「欠けたピース/隙間」型から中小規模の病院等で総合内科診療から在宅までを担うタイプまで幅があり,各々の要求に応えた研修環境を提供することは容易ではない。このように病院総合診療にかかる期待の大きさと求められる役割の多彩さに加え担い手側の指向も多彩で,各診療現場の置かれた環境や人的条件に即したスタイルの模索が当面続くものと考えざるを得ないと思われる。
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© 2016 一般社団法人 日本農村医学会
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