日本農村医学会雑誌
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65 巻, 2 号
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第64回学術総会シンポジウムⅠ「高齢者医療の現状と問題点」
資料
  • 山本 真
    2016 年 65 巻 2 号 p. 123-128
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     最近の高齢者肺炎の現状を理解するため下記の検討を試みた。対象は2010年4月から5年間の当科入院患者3,784名。 〔方法〕肺炎の診断と年齢で(65歳未満;若年群,65歳以上;高齢群)分類して解析した。 〔結果〕肺炎の入院患者は全体で718名(19%),年齢中央値は78歳。若年群は118名年齢中央値58歳であった。全入院患者に占める高齢群の割合は2011年には11%であったが2014年には20%に増加していた。死亡患者については高齢群が有意に多かった。(147名vs15名;p<0.05)在院日数の中央値では自宅退院,死亡群とも両群に有意差を認めなかったが,転院群では高齢群では中央値が48日であった。肺炎に関してはガイドラインが整備されており,特に高齢者では特別な加療を要する場合は多くないため,地域での病診・病病連携をIT化などでさらに強化し,一般病院・在宅での加療が可能にする必要がある。
  • 狩野 吉康
    2016 年 65 巻 2 号 p. 129-135
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     1989年に血液中のウイルスの核酸から発見されたC型肝炎ウイルスは,それまで非A非B型肝炎と診断されていた肝炎,特に輸血後肝炎の大部分の原因ウイルスであることが判明した。その後,日本赤十字社がいち早く輸血血液のHCVのスクリーニングに着手したため新規のC型肝炎は激減した。そのため,我が国ではC型肝炎患者の高齢化が著しく,抗ウイルス療法が導入できない症例も少なくなかった。1992年からインターフェロンで始まったC型肝炎に対する抗ウイルス療法は,近年急速な進歩をとげインターフェロンを使用しないIFN freeの治療が第一選択となり,抗ウイルス効果だけではなく治療の認容性も格段向上した。このため高齢者に優しい治療となり,抗ウイルス療法の対象が拡大している。
  • 森 拓也
    2016 年 65 巻 2 号 p. 136-143
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     不整脈は加齢とともに増加する。高齢者においては加齢に伴う刺激伝導系及び周辺組織の変性,線維化により生じる伝導障害に加え,高血圧,糖尿病,虚血性心疾患,心不全,電解質異常などの基礎背景疾患が不整脈の発生・増悪に関与している。高齢者に特徴的にみられるのは,刺激生成異常(洞徐脈,洞不全症候群),刺激伝導障害(房室ブロック,脚ブロック),ならびに上室性不整脈(上室性期外収縮,心房細動)である。高齢者では自覚症状が多様化し,個人差が大きく,認知症の合併もあり,不整脈の臨床徴候をとらえることが容易でない。薬物療法においては高齢者における薬物動態の変化をふまえた投与が望ましい。全身の合併症,各臓器の予備能の低下が存在し,多剤服用例が多いため慎重な薬剤選択が必要となる。心房細動は加齢とともに増加し,心原性脳塞栓症を発症した時には高齢者のQOL,生命予後に重大な影響を与える。抗凝固療法の適応はCHADS2スコアにて評価され,出血性合併症のリスクを考慮したうえでワルファリンまたはNOACでの治療が選択される。非薬物療法(恒久ペースメーカー,カテーテルアブレーション,埋込み型除細動器)には年齢上限はないが,侵襲度を十分に考慮して判断されなければならない。高齢者では心機能予備能が低く,生理的ペーシングが主流である。
  • 村田 志保
    2016 年 65 巻 2 号 p. 144-148
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     認知症医療の地域の中核機関として,2008年から,認知症疾患センターの運営事業が開始された。2012年に「認知症施策5か年計画(オレンジプラン)」で示された「認知症になっても地域で生活できる社会」の理念のもと,当院も2010年に疾患センターの指定を受けた。総合病院にある有床精神科として,身体疾患を合併する認知症患者を受け入れる役割をもつ。  これまで医療と地域支援者のあいだで共有できていなかった,入院の適応や入院治療の目的を明瞭にすることが重要であると考えた。また,入院の長期化を防ぐためには,症状の改善が医療的に適切になされ,有効な退院支援が行なわれなければならない。そのために院内,院外の連携に幾つかの工夫を行なった。中でも,リハビリテーションを含めた他職種協働のケアパスを利用して入院介入の質を上げること,医療者が地域に出向くいくつかのアウトリーチ系の取り組みに力を入れ退院支援を早期から行なうことに努めた。
  • 男女差の検討
    鈴木 康司
    2016 年 65 巻 2 号 p. 149-152
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     高齢者夫婦二人世帯に発症した大腿骨近位部骨折の自宅復帰について男女差について調査した。  地域連携パス開始後の2007年1月から2013年12月までに手術加療した65歳以上の夫婦二人世帯の大腿骨近位部骨折85例87関節を対象とした。  急性期病院および回復期病院から退院時の自宅復帰数(率)を調査した。男女差について自宅復帰数を調査した。受傷前,退院時のBarthel indexを男女差について調査した。 退院時の男女合計での自宅復帰人数(率)は70例(80%)であった。女性の自宅復帰は40例(85%),男性の自宅復帰は30例(75%)であった。  受傷前,退院時のBarthel indexは女性で,それぞれ平均90点,81点,男性で,それぞれ平均84点,70点であった。自宅復帰について男女間で有意差は認めなかったが女性患者の自宅復帰が高い傾向にあった。
  • 三宅 範明
    2016 年 65 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     前立腺肥大症は高齢者に多い疾患であるが加齢とともに発症頻度は増大する。前立腺肥大症診療ガイドラインに準じ診断,治療を行なう必要がある。重症度にもよるが一般的には薬物治療で治療は開始されることが多い。治療効果が不良な場合には外科的治療を検討する。外科的治療方法として長きにわたりゴールドスタンダードとされていた経尿道的前立腺切除術以外にもレーザーを用いた術式が開発され普及しつつある。加齢に伴い夜間頻尿に関連する転倒ひいては骨折発生率や死亡率が増大するとの報告もある。単に高齢であるという理由だけで外科的処置を躊躇すべきではない。一方,高齢者特有な術後合併症もあるため手術実施の決定は慎重に行なうべきである。年齢もひとつの因子とし総合的に勘案し個々の症例ごとに適切な治療方針を決定すべきである。
第64回学術総会シンポジウムⅡ「世界最高齢社会としての秋田県~その医療の現状と将来展望~」
資料
  • 佐藤 茂康
    2016 年 65 巻 2 号 p. 160-166
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     本県においては,厚生連9病院が県内8つの二次医療圏それぞれに1病院以上存する状況にあり,厚生連病院が,地域における中核的な医療機関としての役割を長く担ってきた。  少子高齢化に伴う人口減少が全国で最も著しい地域とされる本県にあっては,患者数についても直近10年間で減少の一途を辿ってきたが,急性期医療の提供や今後,大きな変化が予想される医療ニーズへの対応等,地域における我々の果たすべき役割は不変であろうと考える。  こうした中,これまで以上に地域医療連携の重要性が高まることについては論を俟たないが,地域医療連携に関する我々の課題とそれらへの対応として,①病棟スタッフと連携室スタッフの「意識のずれ」の解消,②連携室スタッフの充実と体制の再構築,③地域における連携の深化,の3点を挙げ,私見をまとめた。  地域医療を守る,という厚生連病院の使命を全うするためにも十分な地域医療連携体制を構築する必要があるが,それは地道な努力を続けることを通じてしか,成し遂げられないのではないかと考える。
  • 佐々木 薫
    2016 年 65 巻 2 号 p. 167-171
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     各都道府県において,地域医療構想(ビジョン)の策定に向けて動き出している。この構想には,団塊の世代がすべて75歳以上の後期高齢者を迎える2025年に向けて,病床の機能分化・連携を進めるため,データ分析による医療機能ごとの医療需要及び病床必要量の推計とともに,目指すべき医療提供体制を実現するための施策が盛り込まれる。  秋田県においても,病床機能の分化・連携,在宅医療の充実,医療従事者の確保・養成等の施策について,各地域において協議が進められているところである。  秋田県の医療提供体制の課題について述べるとともに,地域医療構想策定のベースとなるデータ分析や,各地域における協議状況を踏まえ,人口減少と著しい高齢化が進行する状況の中で,将来の地域の医療・介護ニーズに対応した医療提供体制の在り方等を考察しながら,地域医療構想の策定状況について述べる。
  • 中小病院の立場から
    中鉢 明彦
    2016 年 65 巻 2 号 p. 172-177
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     「地域包括ケアシステム」の中で大きな柱のひとつとされる在宅医療の農山村地域における現状を分析し在宅療養支援病院としての今後の課題や問題点について考察する。
  • 齊藤 崇, 作左部 大, 桑原 直行
    2016 年 65 巻 2 号 p. 178-183
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     我が国の少子高齢化が最も尖端的に現れているのが秋田県であり,深刻かつ慢性的なマンパワー不足にも拘わらず,超高齢化社会ゆえの病院負担が年々加速度的に増している。また,高齢者は複数の疾患を有し,認知症,転倒転落リスクなどの特性があり,これが救急現場から入院診療,退院へのパスが円滑に進まない要因ともなっている。  総合診療部門の設置はこうした問題を包括的に解決する処方箋として期待されたが,未だ大きな潮流となっているとは言い難い。当院では2012年,秋田県からの委託事業として救急・総合診療部をプラットホームとして秋田県総合診療・家庭医研修センターを開設して総合医育成に取り組み,現在まで6名の後期研修医を受け入れてきたが,直面する課題は少なくない。  第1は「総合診療医」のリソースである。本邦ではこれまで長い間大学の医局制と一体化した専門医指向型の医師育成がなされてきており,「総合」を指向する若手は未だ多くない。第2は「総合」の多義性に由来する問題である。同じ「総合診療医」とはいえ,①「救急」に軸足があるもの,②「病院総合医」,③診療所を拠点とし在宅診療に力点がある「家庭医」まで多彩で,しかも「病院総合医」は病院の規模や診療科構成により役割が異なり,比較的大規模で各診療科が揃った病院での「欠けたピース/隙間」型から中小規模の病院等で総合内科診療から在宅までを担うタイプまで幅があり,各々の要求に応えた研修環境を提供することは容易ではない。このように病院総合診療にかかる期待の大きさと求められる役割の多彩さに加え担い手側の指向も多彩で,各診療現場の置かれた環境や人的条件に即したスタイルの模索が当面続くものと考えざるを得ないと思われる。
  • 島 仁
    2016 年 65 巻 2 号 p. 184-187
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     平成26年4月,新たな地域医療連携ネットワークとして「あきたハートフルネット」が運用を開始した。秋田県と秋田県医師会が共同構築し,秋田県医師会が運営している。  システムとしては過去の反省点を踏まえ,簡便な操作で多くの医療機関が参加できるよう,双方向システムを導入した。特に診療所に関する機能を充実させ,電子カルテやデータ標準化の有無を問わずに参加できるよう,「アップローダ」と「ポータル画面」という新機軸を設けた。  基幹病院と診療所を区別しないシームレスな情報交換・共有が可能となることで,紹介患者の情報参照や地域医療連携パスを用いた共同診療体制の構築が可能となる。将来的には,地域包括ケアの中で在宅医療を視野に入れた多職種広域連携ネットワークに育て,秋田県の医療に貢献したい。
原著
  • 高齢者虐待の事例からMSWの役割について考察する
    小林 宏美, 杉村 龍也, 片寄 智香子, 八木 隆太, 森 京子, 夏目 洋介, 天野 千晴
    2016 年 65 巻 2 号 p. 188-195
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     高齢者虐待は身体的虐待,世話の放任・放棄(ネグレクト),心理的虐待,性的虐待,経済的虐待の5つの行為に分類されており,家庭内の問題にとどまらず社会的問題として認識されている。  平成22年度から平成25年度に対応した高齢者虐待の事例から,これらの問題に対応する医療ソーシャルワーカー(以下MSW)の在り方について検証し考察した。また,児童虐待の事例との比較から,高齢者虐待の特徴を検証した。  当院で対応した高齢者虐待の事例の特徴は,①介護保険サービスの利用が不十分,②虐待者が認知症や精神疾患などの障害を抱えていた,③被虐待者や家族が経済的問題を抱えていた,というものであった。一方,児童虐待との比較では,児童虐待はMSW介入時にすでに関係機関が対応している事例が多く,病院内で発見される事例は44%にとどまるのに対し,高齢者虐待は70%が病院内で発見されていた。また,児童虐待は虐待者との分離を行なった事例が52%にとどまるのに対し,高齢者虐待は81%で分離を行なっている。これは,児童虐待は病院内周知が徹底されているため,グレーゾーンのものも事例として挙がってきやすいのに対し,高齢者虐待ははっきりと“虐待”とわかるような重度な事例しか挙がってこないことが要因として考えられる。  今後,診療に携わる医師や看護師が確実に“虐待”を発見できるよう,またMSWが高齢者虐待の要因である,被虐待者の認知症状や経済的問題,虐待者の障害や経済的問題,介護ストレスを早期に解決できるよう,MSWには虐待対応の仕組みづくりや病院内への周知がより一層求められると考える。
  • 認知症の重症度によって信頼性は異なるか?
    川端 悠士, 澄川 泰弘, 吉仲 真美, 武市 理史, 後藤 圭太, 藤森 里美, 冨川 成美
    2016 年 65 巻 2 号 p. 196-201
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     本研究の目的は大腿骨近位部骨折例におけるHHD(Hand Held Dynamometer)を用いた筋力測定の検者内信頼性が認知症の重症度によって異なるか否かを明らかにすることである。  当院へ入院加療となった大腿骨近位部骨折術後例144例のうち認知症老人の日常生活自立度がランクⅢ・ランクⅣ・ランクMに該当する18例,中枢神経疾患の既往を有する8例,転科例2例を除く116例を対象とした。116例を認知症老人の日常生活自立度別に正常群44例,ランクⅠ群38例,ランクⅡ群34例に分類し,級内相関係数(1,1)およびSEM(Standard Error of Measurement)を比較した。  結果として3群間で級内相関係数に有意差は無く,SEMは正常群・ランクⅠ群に比較してランクⅡ群で有意に低値を示し,ランクⅡ群で最も測定値のバラツキが少なかった。  軽度~中等度の認知症を合併した大腿骨近位部骨折例におけるHHDを使用した筋力測定の信頼性には認知症の重症度による大きな相違は無く,高い信頼性が得られることが明らかとなった。
  • 太附 広明, 野間 靖弘, 河端 将司, 河原 朋子, 直井 大地, 嶋田 綾, 壬生 和博, 相澤 達, 井關 治和
    2016 年 65 巻 2 号 p. 202-214
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     心肺運動負荷試験(CPX)は有用な検査であるが,実施可能な施設は限られている。CPXを実施せずに運動処方を行う場合,心拍数や自覚症状などが用いられているが短所もあるため他の指標も必要である。また,CPXのランプ負荷強度設定は一定の見解が得られていないのが実情である。最大歩行速度(MWS)は高齢者の運動機能を反映する簡便な指標であり,運動処方強度と関連性を認められればランプ負荷強度推定にも利用可能である。本研究の目的は高齢心疾患患者の運動処方強度とランプ負荷強度をMWSから推定することである。  対象は入院期の急性冠症候群(ACS)患者66例(前期高齢者49例,後期高齢者17例)である。調査項目は臨床的背景,CPX指標,10mのMWSである。MWSから運動処方強度を推定する目的で,運動処方強度を従属変数,他の調査項目を独立変数とした重回帰分析を実施した。さらに嫌気性代謝閾値(AT)時運動強度とMWS から適正なランプ負荷強度を推定した。  後期高齢者ではMWSのみが運動処方強度を推定する因子として選択された(調整済みR2=0.278,p=0.037)。しかし前期高齢者では有意な因子として選択されなかった。またランプ負荷強度の推定はAT 時運動強度とMWSの回帰式よりMWSが1.5m/s未満では5ワットランプ,1.5m/s以上では10ワットランプを利用することが適性と判断された。 結論として,MWSは後期高齢男性ACS患者の運動処方強度と関連があり,ランプ負荷強度に利用できる可能性が示唆された。
  • 尾臺 珠美, 市川 麻以子, 宮坂 尚幸, 高木 香織, 西田 慈子, 塗師 由紀子, 中村 玲子, 服部 早苗, 遠藤 誠一, 坂本 雅恵 ...
    2016 年 65 巻 2 号 p. 215-221
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     2009年から2014年の6年間に当院で妊娠22週以降に分娩した6,236件のうち,死産であった35症例(0.56%)を対象とし,周産期背景と子宮内胎児死亡(IUFD ; intra uterine fetal death)の原因について後方視的に検討した。35例の年齢中央値は34歳で,高年妊娠は17例(48.6%),初産婦18例,経産婦17例,高年初産は7例(20%),不妊治療後は5例(14.3%)であった。IUFD診断時の妊娠週数の中央値は30週で,飛び込み受診のため週数不明例が4例あった。6,236件のうち高年分娩は1,790例で,35歳未満のIUFDの割合0.40%に比し,0.95%と有意に高かった(p<0.05)。また,全飛び込み分娩例は109例あり,IUFDの割合は3.7%と有意に高かった(p<0.05)。受診契機はIUFDのため他院からの紹介6例,母体搬送3例,救急搬送5例,自己来院15例,入院中6例であった。IUFDの原因は臍帯因子10例,胎盤因子9例,胎児因子4例,外傷1例,原因不明11例であった。飛び込み受診例・高年妊娠でのIUFDの割合は高く,妊婦健診受診への啓発活動とより慎重な妊娠管理が求められる。約30%は原因不明であり,死因究明に対して積極的な姿勢が望ましい。
研究報告
  • 大山 朋彦, 渡辺 章充, 岡田 恒夫, 村野 勇, 中安 健, 瀧原 純, 玉造 純子, 村田 寛子
    2016 年 65 巻 2 号 p. 222-227
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     発達障害児に対するリハビリテーションの問題点を整理し,今後の体制づくりに生かす為現状認識を調査した。当院理学療法士を対象に,経験年数,発達障害児の支援や家族対応,他職種間連携に対する不安度や実施度を記載した調査票を作成し実施した。不安内容の調査に加え,不安度や実施度はVisual Analog Scaleにて評価した。他職種間連携の不安度及び実施度は,職種間の差をMann-WhitneyのU検定にて分析した。結果は,経験年数6.5年,支援に不安有りと20名(90.9%)の回答があった。実施不安内容は,予後予測や治療内容の立案,児とのコミュニケーションの取り方が難しいであった。家族対応では,予後予測や治療内容,運動指導の伝え方に不安を抱く者が多かった。他職種間連携の不安度は職種間で有意差を認めなかったが医師,臨床心理士,看護師,メディカルソーシャルワーカー,作業療法士,言語聴覚士の順で不安が高く,実施度は医師,看護師,作業療法士,メディカルソーシャルワーカー,言語聴覚士,臨床心理士の順で高く,臨床心理士と医師の間で統計学的な有意差を認めた。また,本調査より発達障害児に対する現状認識と課題が明らかになり当院独自の体制づくりの基盤となる情報が得られた。
  • セイフティ・ヘルスプロモーションのためのデザイン設計
    桂 敏樹, 星野 明子, 臼井 香苗, 志澤 美保, 藤本 萌美, 細川 陸也, 西澤 美香, 小田川 敦, 石川 智仁, 中川 智子, 南 ...
    2016 年 65 巻 2 号 p. 228-236
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     健康づくり活動の記録から活動の形成過程を分析すると,準備期,合意形成期,企画イベント実施期,継続期に至る過程が明らかになった。この過程を基に多様な地域特性を有する地域においても汎用できる地域住民中心の健康づくりのデザイン設計について提案した。
症例報告
  • 岩下 雅秀, 福田 和史, 田上 真, 寺倉 大志, 若山 孝英, 中村 博式, 畠山 啓朗, 林 隆夫, 前田 晃男, 西脇 伸二
    2016 年 65 巻 2 号 p. 237-243
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     今回我々は先天性胃─腎静脈短絡症による猪瀬型肝性脳症にB-RTOが著効した症例を経験したので報告する。症例は意識障害を繰り返す80歳女性。血清アンモニア値が236νg/dlと上昇し,肝性脳症と診断したが,腹部US,CTおよび腹部血管造影検査では肝硬変や門脈の狭窄は認められず,胃─腎静脈シャントを認めた。以上より,肝硬変や門脈塞栓によるシャントではなく,先天性門脈大循環シャントによる猪瀬型肝性脳症であると診断した。B-RTO施行後,シャント血流が消失し,アンモニア値は正常域に戻り,意識障害は改善した。先天的胃─腎静脈短絡症の治療には外科的シャント結紮術が施行されるのが一般的であるが,B-RTOは侵襲が少なく有効な治療法と思われた。
  • 西田 慈子, 遠藤 誠一, 高木 香織, 塗師 由紀子, 中村 玲子, 尾臺 珠美, 服部 早苗, 市川 麻以子, 坂本 雅恵, 島袋 剛二 ...
    2016 年 65 巻 2 号 p. 244-249
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     肝臓癌や腎臓癌がエリスロポエチン(Erythropoietin ; EPO)産生腫瘍であることはよく知られているが,近年,巨大子宮筋腫もEPO産生性であることが報告されている。症例は59歳2回経産,49歳で閉経した女性。腹部膨満感と性器出血を主訴に当科受診。骨盤内に30×25cmの巨大子宮筋腫を認めた。術前の採血ではHb21g/dlと赤血球増多症を認め,またEPO38.5mIU/ml,E2 29.9pg/mlと高値であった。腹式単純子宮全摘術及び両側附属器摘出術を施行し,検体は4,740gの平滑筋腫であった。術後28日にHb15.1g/dl,EPO6.0mIU/ml,E2 5.8pg/mlへ低下した。EPO産生巨大子宮筋腫の半数は閉経後の症例であり,子宮筋腫組織内で産生されるエストラジオール(Estradiol ; E2)が閉経後の子宮筋腫の増大を促進し,EPO分泌刺激となっている可能性が示唆される。
  • 西澤 理, 平林 直樹, 菊川 忠之
    2016 年 65 巻 2 号 p. 250-253
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     患者は66歳の女性。46歳で子宮筋腫で子宮摘除術を受け,56歳時頃から腟断端脱で悩んでいた。2013年1月,64歳で排尿困難のために尿道カテーテルが留置されていた完全腟断端脱に対して経腟メッシュ手術を施行した。術後,腟断端脱は治癒したが,高度な尿失禁があり,2013年6月,経閉鎖孔テープ手術を行ない,3か月間は尿禁制であった。しかし,尿道口からの膀胱内反が顕著となり,同部の痛みと尿失禁の再発もあり,2014年11月,尿道形成術と腹直筋筋膜スリング手術を行なった。術後は膀胱内反が治り,自排尿が可能で尿禁制となり,満足すべき状態である。
  • 三浦 貴徳, 本間 玲子, 飯田 高久
    2016 年 65 巻 2 号 p. 254-260
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     アンドロゲン抑制療法による重篤な耐糖能の悪化症例は以前より報告されている。一方,糖尿病性舞踏病では,主に高血糖状態において片側あるいは両側の舞踏病様の不随意運動が出現し,頭部MRIが診断に有用である。今回,前立腺癌のアンドロゲン抑制療法開始後に著明な高血糖を呈し,糖尿病性舞踏病を発症した症例を経験したので報告する。症例は71歳,男性。前立腺癌の診断にて,ビカルタミド内服と酢酸リュープロレリン皮下注を開始した。開始時のHbA1cは食事療法のみで6.6%であった。その後,右上肢の不随意運動が出現,随時血糖が691mg/dl,HbA1c 19.5%であったため当科紹介となった。当科における酢酸リュープロレリンの中止とインスリン療法の開始により,高血糖は速やかに改善した。一方,不随意運動は,入院時の生理食塩水点滴により消失したが,血糖値改善後に再燃した。
  • 町田 明, 大津 信一, 石原 正一郎, 高島 実, 井上 千秋, 小寺 実
    2016 年 65 巻 2 号 p. 261-267
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     症例は77歳の女性。左上顎犬歯の破折を契機に食事が摂れなくなり,7日後に37℃台の発熱及び歩行時のふらつきによる転倒を主訴に当院救急外来を受診。髄液細胞数の増加及び脳MRIでの咀嚼筋間隙の膿瘍形成の所見から,細菌性髄膜炎を合併した咀嚼筋間隙膿瘍と診断。抗生剤投与により炎症所見は改善したが,入院7日目に両眼球突出を伴った全方向性の眼球運動障害が出現。D-dimerの上昇,頭部造影CTでの上眼静脈の造影欠損から,海綿静脈洞血栓症と診断。抗生剤投与・膿瘍の穿刺排膿に加えて抗凝固療法を行なうことで,炎症所見及び海綿静脈洞血栓症による眼球運動障害は改善を認め,後遺症なく退院した。海綿静脈洞血栓症は,抗生剤の発達により現在では発生頻度は減少しているものの予後不良の疾患であり,早期診断・治療が重要である。
  • 大立 知子, 奥村 暢将, 近藤 春香, 小塩 真史, 林 修平, 黒田 浩一, 深津 明日樹, 池ノ内 紀祐, 原 徹
    2016 年 65 巻 2 号 p. 268-272
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     症例:62歳女性。直腸癌およびその肺転移に対し,高位前方切除および肺部分切除を行なった。術後化学療法後に経過観察中であったが,咳をすると肉片が出ると訴え当院を受診した。耳鼻科における喉頭ファイバースコープ検査で異常所見はなかったが,胸部CT画像では気管支内腔に突出する結節性病変を認めた。気管支鏡検査では気管支壁からポリープ状に突出し,気管支壁から容易に剥離・脱落する多発粒状結節性病変を認めた。同部位より直視下経気管支生検を行ない,大腸癌の気管支内転移と診断,抗癌薬治療を開始した。結語.肉片の喀出をきっかけに,大腸癌の気管支内転移が発見された稀な症例であった。気管支鏡所見は非常に珍しく,気管支壁と癒合傾向が非常に弱く,容易に脱落する腫瘍が多発していた。大腸癌術後に繰り返す肉片の喀出を主訴に受診した患者に対して大腸癌気管支内転移を念頭におき,早期に画像検査と気管支鏡検査を考慮する必要があると考えられた。
  • 栫 昭太, 丹村 敏則, 酒井 貴夫, 西﨑 章浩, 鈴木 健人, 山田 修司, 村瀬 和敏, 田中 創始, 冨本 茂裕, 高橋 佳嗣, 宮 ...
    2016 年 65 巻 2 号 p. 273-278
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     症例は63歳,女性。約1年間の治療自己中断後に口渇多尿等で1回目はX年11月,2回目はX+1年10月に入院した。1回目入院時は持効型インスリン・グラルギン8単位1日1回,超速効型インスリン・グルリジン4単位毎食直前,2回目入院時はグラルギン4単位1日1回,グルリジン3単位毎食直前を使用し,さらに2回目入院時はGLP 1受容体作動薬リラグルチド0.3mg・1日1回を併用した。入院後の5日間の血糖変動(以下mg/dL)は1回目入院時の朝食前,昼食前,夕食前,就寝前が第1日:-,-,347,180,第2日:273,266,109,188,第3日:75,192,186,182,第4日:93,194,91,144,第5日:78,95,124,127,2回目入院時がそれぞれ第1日:-,-,486,299,第2日:140,137,195,128,第3日:101,122,114,108,第4日:101,123,123,137,第5日:89,136,111,129であった。CGMでは1回目が平均128,標準偏差34,2回目が平均125,標準偏差20であった。GLP 1受容体作動薬のインスリン分泌作用やグルカゴン抑制作用により入院後のインスリン減量と早期の血糖平坦化の達成が実現できたと考えられた。
看護研究報告
  • 秋山 朋子, 中田 美智子, 坂本 紅美子, 川上 恵美子
    2016 年 65 巻 2 号 p. 279-284
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     同じ設置主体(以下A組織とする)である病院及び施設は,専門職として主体的かつ継続的に質の高い看護実践ができる看護師を育てるため,段階別研修を実施しているが,中堅看護師を対象とした研修は実施していない。  本研究の目的は,中堅看護師の継続教育の現状と中堅看護師が必要と考える研修内容及び方法を明らかにし,教育計画の基礎資料を得ることである。研究方法は,量的記述的研究で,A組織の病院及び施設の看護師経験年数10年以上(管理職を除く)の看護師を対象に無記名自記式質問紙を用いて実施した。量的に分析できる項目は単純集計,自由記述は帰納的分類による内容分析を行ないカテゴリー化した。対象者は355名,回収192部,回収率54.0%であった。過去1年間の研修会参加率は,院内での研修会は92.5%,院外での研修会は69.2%であった。研修会への参加に対する思いは,「勤務として認められるなら参加したい」が56%,内容及び方法の要望を聞き入れてもらえているか否かは,「どちらとも言えない」が56%,研修会に参加できない理由は,院内での研修は「疲れている」が25%,院外での研修は「開催場所が遠い」が24%であった。中堅看護師としての能力を向上する研修会は61%の人が希望し,内容は「看護実践能力」が54%,形式は「講義・演習」が47%であった。理由は「実技があることで技術が身につく」等があり,看護実践能力に関する内容で,実技を取り入れた研修計画が課題である。
短報
  • 白石 卓也, 千村 洋
    2016 年 65 巻 2 号 p. 285-290
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     ウォーキングに関しては高齢者においても健康増進につながる目標値が明らかとなっているが,高齢者は加齢に伴う身体機能の低下や基礎疾患等の理由のため目標を達成できない場合がある。しかし,目標達成有無における高齢者の心理機能への影響を報告した研究はほとんどない。今回,高齢者を対象に,歩数と活動量を指標として目標設定したウォーキングによる運動介入を行ない,その介入が高齢者にどのような心理機能の変化を及ぼしたのか検討した。対象は,平成27年7月から24週間継続してウォーキングによる運動介入をうけた高齢者14名(男性5名,女性9名)とした。1日平均歩数8,000歩かつ1日平均中強度活動時間20分という目標を設定し,運動介入を行なった。運動介入前と介入後24週目に心理機能の評価を行ない,その変化を比較検討した。さらに,設定した目標を達成できた群(達成群)8名および達成できなかった群(未達成群)6名に分け,さらに比較検討した。その結果,全対象者,達成群および未達成群の心理機能に介入前後で有意な変化はなかったものの,達成群では心理機能は向上する傾向があり,未達成群では主観的健康感および生活満足度は低下し,うつ評価は悪化する傾向があった。目標設定した運動介入は,目標達成できれば心理機能は向上しうるが,目標達成できなければ心理機能の低下を引き起こし健康増進の阻害因子となりうる可能性が示唆された。
  • 朱宮 哲明, 山田 千夏, 和嶋 真由, 伊藤 美香利, 西村 直子, 尾崎 隆男
    2016 年 65 巻 2 号 p. 291-294
    発行日: 2016/07/31
    公開日: 2016/09/24
    ジャーナル フリー
     食物アレルギー児に給食を提供する病院では誤食防止対策が求められている。これまで当院栄養科では,アレルゲンを除去した料理(アレルゲン除去食)を専用区域において担当調理師が調理し,その料理内容を食札に明記することにより誤食防止に努めてきた。平成26年1月~12月の1年間に,当院に入院した食物アレルギー児258例にアレルゲン除去食を提供したが,アレルゲンを含有する料理の誤配膳が3件発生し,内2件で患児の誤食があった。誤配膳が発生した原因として,アレルゲン除去食とアレルゲンを含む料理が同色の食器に盛り付けられていたことが考えられた。対策として誤食防止対策を改定し,アレルゲン除去食の食器とお膳を全て黄色に統一して他の料理と明確に区別した。さらに,アレルゲン除去食専用の棚を設け,配膳前の最終確認には調理担当者2人によるダブルチェックを義務づけた。今後も誤食防止対策の改良に努めていきたい。
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