日本農村医学会雑誌
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研究報告
肺癌化学療法患者と健常人の簡易嗅覚検査による嗅覚変化の基礎検討
関口 芳恵中島 陽子飯田 恵子池田 聡稲垣 雅春
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キーワード: 肺癌化学療法, 嗅覚検査
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2019 年 68 巻 1 号 p. 45-51

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抄録

 化学療法受けている肺癌患者は,栄養状態が悪い傾向にある。嗅覚の低下は食欲に影響を与えるため肺癌術後の化学療法患者の嗅覚変化と,比較のために健常人を対象に調査を行なった。当院呼吸器外科で,2016年3月から2017年9月に肺癌化学療法を受けた患者(N=28,平均69.8歳)に,簡易嗅覚検査キット(Open Essence®)を用い,12種類の「におい」について検査を行なった。患者群においては複数回の測定を行なった。健常人(N=284,平均41.9歳)も同様に検査した。患者の年齢に合わせるため健常人のうち60歳以上(N=35,平均73.2歳)の群については別に抽出し検討を行なった。患者の正解率は,平均44.4%であった。健常人全体の正解率は,平均76.8%で,60歳以上の健常人の正解率は,平均54.5%であった。年齢が高くなるにつれ正解率は低下した。また,男性,喫煙者では有意に正解率は低かった。化学療法と嗅覚の低下には明らかな関連は見られなかった。肺癌化学療法患者は,治療前よりすでに健康な人より嗅覚が鈍いことが今回の調査で分かった。肺がん患者には喫煙経験者が多いこと,健常人においても喫煙の有無で有意に嗅覚に差があったことから,その原因としては喫煙が最も考えられた。今後は,追加調査を行ない,患者の栄養状態を良好にするために,このデータを活用していきたい。

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© 2019 一般社団法人 日本農村医学会
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