日本農村医学会雑誌
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68 巻, 1 号
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原著
  • 水戸 裕二朗, 秋葉 靖雄, 田口 圭祐
    2019 年 68 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     我々産婦人科医は厚生労働省の定めた病態を有する妊婦をハイリスク妊娠・分娩として管理している。これらは,しばしば重篤化し,出生した児がterminationの適応となり,早産でNICU入院となる症例も少なくない。しかしハイリスクな妊婦を正期産まで管理し得た場合,出生した児にとってもNICU入院のリスクになりうるかは定かではない。我々は正期産であってもハイリスク妊婦の出産が,NICU入院率を増加させるのかをハイリスク因子の項目ごとに検討した。またハイリスク項目の40歳以上の初産婦に注目し,NICU入院率を増加させる要因かを検討した。
     2014年1月から2015年12月の期間に当院で妊娠37週以降に分娩となった総出生児数2,275人を対象とした。NICU入院率はハイリスク妊婦High Risk(HR)群で16.28%,非ハイリスク妊婦Low Risk(LR)群で3.79%であり,HR群でNICU入院率が有意に高かった(P<0.0001)。また40歳以上の初産婦であるElderly Primipara(EP)群とコントロール群(C)のNICU入院率を検討した。NICUへの入院率はEP群41.86%,C群4.50%であり,EP群で有意に高かった(P<0.0001)。高年妊娠は妊娠糖尿病や妊娠高血圧症候群,常位胎盤早期剥離の合併率が高いと言われている。本検討でもEP群で有意に上記疾患の合併率が高かった。ハイリスク妊婦の分娩は,児の対応も含め慎重な管理が必要と言える。
  • 木下 徹, 藤井 健志
    2019 年 68 巻 1 号 p. 8-17
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     高齢化社会の大きな問題のひとつに認知症がある。近年のコホート研究において,血中コエンザイムQ10(CoQ10)濃度が高い者ほど認知症発症リスクが低いとの結果が報告されている。本研究では地域住民を対象とし,ユビキノール(還元型CoQ10)の摂取による血清ユビキノール濃度および認知機能の変化を評価した。愛媛県上島町在住で,1日100~150mgのユビキノールを6か月~2年間継続摂取した61名(男性26名,女性35名,33~87歳)について,摂取前後での血清ユビキノール濃度及び1分間のDigit Symbol Substitution Test(DSST)スコアを評価した。さらに,3か月間の非摂取期間後の血清中ユビキノール濃度とDSSTスコアについても分析した。ベースラインにおいて,年齢とDSSTスコアは強い負の相関を示したが,血清ユビキノール濃度とDSSTの間には有意な相関は認められなかった。ユビキノールの長期摂取により,血清ユビキノール濃度は有意に上昇し,DSSTスコアも有意に上昇した。また,3か月間の非摂取期間後,血清ユビキノール濃度はベースライン値まで有意に低下したが,DSSTスコアについては有意な変化は見られず高い値が維持された。本研究は単群試験であり結果の解釈には留意が必要であるが,ユビキノールの長期摂取によって認知機能が改善する可能性が示された。
  • 5年間の由利本荘地区におけるHPV併用検診の結果から
    軽部 彰宏, 齋藤 史子, 設楽 明宏, 中村 恵菜実, 金森 勝裕, 髙橋 瑞紀, 池田 梢, 川名 由佳
    2019 年 68 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     平成24年度より由利本荘地区(由利本荘市・にかほ市)で,20~49歳の女性を対象として子宮頸部細胞診にHPV検査を併用したHPV(human papillomavirus)併用検診が開始された。平成28年度までの5年間で3,581名がHPV併用検診を受け,369名(10.3%)がHPV検査陽性であった。細胞診あるいはHPV検査が陽性であった433名の中で,342名(79.0%)に対して組織診が行なわれた。今回報告したHPV併用検診で,子宮頸がん検診の発見目標とすべきCIN2(cervical intraepithelial neoplasia)以上の病変は62名(18.1%)に発見された。細胞診は正常であるがHPV検査が陽性で組織診を受けた204名の中に,18名のCIN2と6名のCIN3以上の病変が存在していた。従来の細胞診のみによる子宮頸がん検診のCIN2以上の発見率は0.58%であったが,HPV検査を併用することで1.73%までに向上した。子宮頸がん検診の精度向上と子宮頸部病変の早期発見のために,HPV併用検診を積極的に取り入れていくべきと考えられた。
  • 医師不足下地域医療を支えるための診療科を越えた協力体制
    小林 孝, 阿部 栄二, 阿部 利樹, 菊池 一馬, 木下 隼人, 木村 竜太, 村井 肇, 小西 奈津雄, 岡本 健人, 井野 剛志, 大 ...
    2019 年 68 巻 1 号 p. 26-30
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     増え続ける高齢者肺炎の過重な負担で疲弊していく呼吸器内科医師の負担を減らすため,当院では2010年2月より高齢者肺炎症例を全科で分担して診療している。今回,このような状況で整形外科医が行なった肺炎治療の成績を他科での治療成績と比較し,当院のシステムの検証を行なった。2017年11月1日から2018年10月30日までに当院に肺炎のため入院した70歳以上の症例を対象とした。データベースから肺炎の患者を抽出し,これらの症例の転帰,入院日数を科別に比較・検討した。上記期間内に当院に入院した372例を対象とした。年齢は平均85.6歳(70歳~100歳),男214人,女158人,平均在院日数は20.7日(1~107日),288例が軽快して退院したが,84例(29.2%)が死亡退院していた。CAPは143人,NHCAPは229人で診療科間で差はなく(ピアソンカイ二乗検定,p=0.19),A-DROPで評価した重症度にも診療科間で有意差は認めなかった(ピアソンカイ二乗検定,p=0.25)。整形外科入院患者数は30人,年齢は平均86.1歳(71歳~99歳),在院日数は平均19.1日(1~107日)で,27人は軽快して退院したが3人(10.0%)が死亡退院していた。平均在院日数を診療科間で比較すると有意差を認め(ANOVA,p=0.0001),t‒テストを用いたペアワイズ比較では,循環器内科と外科(p=0.03),腎臟内科と脳神経外科(p=0.01),腎臟内科と外科(p=0.0005)の間で有意差を認めた。転帰を診療科間で比較したが有意差を認めなかった(ピアソンカイ二乗検定,p=0.15)。医師の偏在と医師不足の状況下で増え続ける高齢者肺炎に立ち向かうため,専門外の全科が連携して肺炎治療にあたることが重要である。
研究報告
  • 「保健師教育に求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度」を用いた学生の自己評価からの考察
    萩原 智代, 南部 泰士
    2019 年 68 巻 1 号 p. 31-44
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     社会情勢の変化に伴い,高度な実践力をもった保健師の養成が期待されている。「保健師教育に求められる実践能力と卒業時の到達目標と到達度(以下;MR)」及び研究者が設定した項目を用い,A看護大学の公衆衛生看護学の教育手法に関する検討を学生の自己評価を用いて行なうことを目的とした。質問紙調査法を用い,MR 71項目及び「保健師としての活動の希望」3項目を公衆衛生看護学実習(以下;実習)前後で比較した。また,研究者が独自に設定した「グループテーマ報告書に関する項目」8項目は実習後に回答を得た。研究対象者へ本研究の趣旨を文書にて説明し研究参加への同意を確認した。
     A看護大学の保健師課程を選択した53名から回答を得た(回収率,有効回答率共に100.0%)。MRにて実習前後を比較したところ,実習後の到達割合は有意に高かったが,到達割合が70%に達しなかった項目は実践能力「Ⅲ.健康危機管理能力」であった。今後,学内での教育内容や方法を検討し,保健師教育の充実を更に図る必要がある。また,実習を終えた後の保健師としての活動の希望は,資格取得という目的よりも看護職として保健師独自の視点や技術を身に付ける,将来的な保健師というキャリアの選択肢を広げるという目的があることが考えられた。グループテーマ報告書の作成により,学生同士のグループダイナミクスの促進や教員・指導者との積極的な関わりについて学生に大きな影響を与えていることが示唆された。
  • 関口 芳恵, 中島 陽子, 飯田 恵子, 池田 聡, 稲垣 雅春
    2019 年 68 巻 1 号 p. 45-51
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     化学療法受けている肺癌患者は,栄養状態が悪い傾向にある。嗅覚の低下は食欲に影響を与えるため肺癌術後の化学療法患者の嗅覚変化と,比較のために健常人を対象に調査を行なった。当院呼吸器外科で,2016年3月から2017年9月に肺癌化学療法を受けた患者(N=28,平均69.8歳)に,簡易嗅覚検査キット(Open Essence®)を用い,12種類の「におい」について検査を行なった。患者群においては複数回の測定を行なった。健常人(N=284,平均41.9歳)も同様に検査した。患者の年齢に合わせるため健常人のうち60歳以上(N=35,平均73.2歳)の群については別に抽出し検討を行なった。患者の正解率は,平均44.4%であった。健常人全体の正解率は,平均76.8%で,60歳以上の健常人の正解率は,平均54.5%であった。年齢が高くなるにつれ正解率は低下した。また,男性,喫煙者では有意に正解率は低かった。化学療法と嗅覚の低下には明らかな関連は見られなかった。肺癌化学療法患者は,治療前よりすでに健康な人より嗅覚が鈍いことが今回の調査で分かった。肺がん患者には喫煙経験者が多いこと,健常人においても喫煙の有無で有意に嗅覚に差があったことから,その原因としては喫煙が最も考えられた。今後は,追加調査を行ない,患者の栄養状態を良好にするために,このデータを活用していきたい。
  • 島田 康佑, 田中 真彦, 田口 雅士, 山﨑 郁哉, 春日 好雄
    2019 年 68 巻 1 号 p. 52-58
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     MRIの脳槽撮像に用いるconstructive interference in steady state(CISS)では,内耳周辺のアーチファクトが病変に見える場合がある。頭蓋内病変の既往のない15名を対象に,3種の水強調画像(CISS,sampling perfection with application optimized contrasts using different flip angle evolution(T2‒SPACE),T2)を撮像し,診断に有用な脳槽撮像手法を検討した。1.5テスラと3.0テスラのMRI装置にて撮像し,検討項目はcontrast-noise ratio(CNR),アーチファクトの有無および個数とした。CNRはT2‒SPACEとCISSで高値を示した。アーチファクトは1.5テスラでは有意差がなく,3.0テスラではCISSが有意に多かった。T2‒SPACEとCISSは3 D撮像のため,短時間で高コントラストの画像が得られたと考えた。CISSは磁場不均一の影響が大きいため,アーチファクトが多かったと考えた。T2‒SPACEとT 2は高速スピンエコー法であり位相分散の影響が少ないため,アーチファクトが抑制されたと考えた。以上から,T2‒SPACEは高コントラストかつアーチファクトが少ない画像の撮像が期待でき,有用と言える。
症例報告
  • 篠原 剛, 藤森 芳郎, 山田 博之, 町田 水穂
    2019 年 68 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     症例は69歳,女性。40歳時に右乳癌に対し手術の既往がある。多発性骨転移の疑いで紹介となった。PET検査では,多発性骨転移以外の病変は認めず,血液生化学検査ではCEA,CA15‒3,NCC-ST439の上昇を認め,乳癌からの多発性骨転移と診断した。手術時の切除標本では,Estrogen receptor(ER)/Progestron receptor(PgR)陽性,HER2陰性であった。Letrozole,Toremifen Citrateその後Exemestaneを使用したが,治療開始後17か月で骨転移により左股関節部に滑膜嚢胞が形成され,左下肢の浮腫を伴い歩行困難となった。QOL改善のためTegafur/Gimeracil/Oteracil配合剤(以下S‒1)を開始したところ,開始後6か月で,滑膜嚢胞および下肢の浮腫は消失し歩行可能となった。S‒1開始後11か月でCA15‒3は基準値内となった。腫瘍マーカーが徐々に上昇しているが,S‒1投与開始から3年3か月を経過した現在も,骨転移以外の転移はなく,QOLも保たれており治療継続中である。
  • 山脇 孝, 濱田 奈穂子, 張 杰, 山口 恵里, 小室 宏
    2019 年 68 巻 1 号 p. 64-70
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     低血糖症状の無い胃全摘術後3症例でフリースタイルリブレプロ®を使用しグルコースモニタリングを実施した。症例は年齢75±3歳,全例男性,術後経過期間3.3±2.9年,随時血糖値115±45mg/dLであった。測定期間中におけるセンサーグルコース値(SG値)は最高337±54mg/dL,最低44±8mg/dL,3例中2例では測定下限値の40mg/dLであった。α-グルコシダーゼ阻害薬投与後には全例で最高値・最低値・180mg/dL以上である時間帯割合の改善を認めた。SG値が70mg/dL未満であった時間帯の割合は2例で増加したが,同時間帯における平均値は投与前より上昇し60mg/dL未満の時間帯割合も減少していた。モニタリング中に実施した血糖自己測定および食事負荷試験での血糖値とSG値によるコンセンサスエラーグリッド分析では,全てのデータが臨床的に安全域とされるAゾーンとBゾーンに入っていた。
  • 野々垣 郁絵, 砂川 祐輝, 中川 暢彦, 水野 亮, 古池 真也, 田上 鑛一郎
    2019 年 68 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     症例1:73歳女性。腹痛と肛門からの腸管脱出を主訴に受診。肛門外へ約10cm腸管が脱出し,先進部に腫瘤を認めた。CTでS状結腸が直腸内に進入し,同心円状構造target signを認めた。症例2:92歳女性。下血を主訴に受診。肛門外へ約5cm腸管が脱出し,先進部に腫瘤を認めた。CTで直腸の同心円状構造target signを認めた。2例ともCT所見・身体所見より大腸癌が先進したことによる腸重積と診断した。術前に徒手整復を試みたが還納できず,ハルトマン手術を施行した。症例1は術後経過良好で第36病日に退院となった。症例2は術後の離床が進まず麻痺性イレウスが遷延し,第80病日に退院となった。肛門外へ脱出した大腸癌による腸重積は整復できなければ腹会陰式直腸切断術が余儀なくされ,手術侵襲による合併症が懸念される。本病態は骨盤支持組織の脆弱した高齢者に多く,個々の症例に応じた術式選択が必要である。
  • 久保田 洋介, 榎本 好恭, 加藤 拓見, 洞口 正志, 宮崎 勇希, 滝戸 成人, 茂木 はるか, 石井 大介, 武富 龍一, 林 健次郎 ...
    2019 年 68 巻 1 号 p. 77-81
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     特発性大網出血に対し腹腔鏡手術を行ない救命した1例を経験したので報告する。症例は17歳男性,腹痛を主訴に当院救急外来を受診した。初診時,腹部打撲等の外傷の既往がなく便秘の診断にて帰宅した。帰宅後,腹痛が増悪し再受診,入院のうえ経過観察となった。入院後も症状が徐々に増悪したため,造影CT検査を行なったところ腹腔内出血が明らかとなり原因不明の腹腔内出血として出血部位検索,止血目的にInterventional Radiology(IVR;画像下治療)を施行した。IVRでは明らかな出血源が同定不能であったため腹腔鏡検査および止血術を行なう方針とした。腹腔内所見では大網に血腫を形成しており,外傷の既往がないことから特発性の大網出血として大網切除を行なった。術後経過は良好で第4病日退院となった。大網出血に対して低侵襲の腹腔鏡手術を行なうことで,短期間の入院で治療が可能であった。
  • 宮崎 勇希, 齊藤 礼次郎, 島田 友幸, 久保田 洋介, 洞口 正志, 川原田 康, 滝戸 成人, 石井 大介, 武富 龍一, 茂木 はる ...
    2019 年 68 巻 1 号 p. 82-87
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     外傷性横隔膜ヘルニアの2例を経験したため報告する。症例1は76歳の男性。軽トラックを運転中に乗用車と衝突し受傷した。胸部レントゲン,CT検査にて左胸腔内に腹腔内臓器の脱出を認め,外傷性左横隔膜ヘルニアの診断にて開腹手術を施行した。左横隔膜腱中心に約12cmの損傷を認めたため縫合閉鎖を行なった。症例2は75歳男性。軽トラックを運転中に乗用車と衝突した。胸部レントゲン,CT検査で左胸腔内に腹腔内臓器の脱出を認め,外傷性左横隔膜ヘルニアの診断で開腹手術を施行した。左横隔膜腱中心に約15cmの損傷を認めたため縫合閉鎖を行なった。外傷性横隔膜ヘルニアは比較的まれな病態であるが,手術による治療を必要とするため早期の診断が重要である。また,鈍的外傷による外傷性横隔膜ヘルニアでは高エネルギー外傷を原因とすることが多く他臓器の損傷を合併しうるため,診断および手術の際にはそれらを見逃さないようにすることが重要と考えられた。
  • 吉田 卓功, 渡邉 豊治, 武永 智, 水戸 裕二朗, 田口 圭祐, 秋葉 靖雄
    2019 年 68 巻 1 号 p. 88-93
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     Trousseau症候群は悪性腫瘍による血液凝固亢進により血栓塞栓症を惹起する病態である。
     今回,脳梗塞を契機に婦人科悪性腫瘍が発見された2例を経験したので報告する。症例1:66歳,0妊0産。左上下肢の脱力感で受診され,頭部MRIで脳梗塞と診断。造影CT検査で卵巣腫瘍を認め,入院後8日目に手術を施行。卵巣明細胞癌と診断。術後化学療法を施行し,2年以上増悪なく経過している。症例2:41歳,1妊1産。意識障害,右片麻痺,失語で受診され,頭部MRIで脳梗塞と診断。造影MRI,造影CT検査で子宮内膜癌が示唆され,入院後19日目に手術を施行。子宮内膜癌Grade 3と診断。術後化学療法を施行し,4年以上増悪なく経過している。
     Trousseau症候群は原疾患の治療が予後に影響するとされるが,多くが手術不可能な進行癌で発見されるため生命予後不良である。
     速やかに診断し機を逸さず集学的な治療を行なうために,神経内科,脳血管外科を含めた他科との密な連携が必要と考えられた。
  • 本間 崇浩
    2019 年 68 巻 1 号 p. 94-99
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     原発性肺癌の手術を契機に所属肺門リンパ節への対側乳癌転移が判明した1例を経験した。既往の乳癌はエストロゲン受容体,プロゲステロン受容体,HER2いずれも陰性のトリプルネガティブ乳癌であったこと,他院で乳癌と診断されたことから病理所見の比較に支障をきたした。腋窩操作を要した乳癌の既往があり,原因不明の肺門縦隔リンパ節腫脹や転移が判明した場合,常に乳癌の再発を考慮する必要があると考えられた。
看護研究報告
  • 澁谷 将成, 多賀 千賀子, 西脇 千夏, ビヤヌエバ 千加子
    2019 年 68 巻 1 号 p. 100-105
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     わが国の高齢化は著しく,認知症高齢者の数は,2025年には約700万人と従来の推定以上になるといわれている。一般病棟においても認知症高齢者の入院が増加しており,認知症高齢者の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:以下,BPSD)における徘徊・不安・焦燥・意欲低下・せん妄・幻覚・妄想・睡眠障害など,対応に苦慮していた。認知症は,患者自身も不安や自尊心の喪失・焦立ちと向き合っており,自身が生涯をかけて蓄積した知的資産を脅かす疾患である。身体疾患で入院中の患者にBPSDの改善を目的としタクティール®ケアを行なった。認知症高齢者で阿部式BPSDスコア13点以上の入院患者を対象とし,ケア後に同評価を行なった。その結果,対象患者全員の阿部式BPSDスコアの減少を認め,Wilcoxon検定にて有意差があった。タクティール®ケア普及を考える会らは,タクティール®ケアによって,脳の視床下部でつくられる不安感・ストレスの軽減にかかわるホルモン「オキシトシン」が増し,反対にストレスによって分泌されるホルモン「コルチゾール」のレベルが低下することで不安や孤独感が緩和される効果があると報告している。A病棟においても,タクティール®ケアを通じて認知症高齢者と看護師間で安心や信頼関係を築くことができ,不穏や異常行動が改善したと考えられる。短期間での効果が得られた為BPSDを有する認知症高齢者に対し,看護ケアとして有効である。
  • 熊谷 朋香, 北川 真由美, 佐藤 則子, 吉田 律子, 千葉 美由紀
    2019 年 68 巻 1 号 p. 106-110
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/07/20
    ジャーナル フリー
     継続看護を行なうために,病棟看護師が退院サマリーで提供するとよいと考える情報と,外来看護師が必要とする情報の違いを明らかにすることを目的とし,質問紙を用いた調査を行なった。質問紙は,退院サマリーに必要と考える情報と継続看護に対する意識について選択式とし,選択した理由も問うた。選択式回答は単純集計,選択理由は類似しているものをまとめ,分析した。結果は,退院サマリーに必要と考える情報は,病棟・外来看護師共に上位6項目は同じであった。しかし,退院サマリーを通して病棟と外来間で看護が継続されていると思うかの設問では,「思う」と回答した看護師の割合は病棟5割,外来1割強であった。それぞれの設問の選択した理由から,外来看護師は継続すべき具体的な情報を退院サマリーで求めているのに対し,病棟看護師は入院中の経過を要約した情報を共有することが継続看護と捉えているという違いが示唆された。この違いは,病棟と外来の看護の特徴が影響していると考える。継続看護を行なうためには,病棟・外来看護師が,互いにどのような情報を必要としているのか知ることが必要である。
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