抄録
集落において高齢者がただ1人で伝統野菜を栽培する意味を捉え,健康との関係を検討するために,半構成インタビューを行ない地域の社会文化的文脈から質的に分析した。その結果,伝統野菜の栽培は,暮らしの中で【人々と結びつく手段】であり,対象者はその中で他者と能動的な関係性を築いていた。また,【老いと向き合うこと】を通して,五感を使い知的機能を活用する主体的な活動そのものである伝統野菜の栽培は【身体機能を維持する手段】となり,【集落を守ること】で対象者は自分の人生に意義や価値を見出していた。
このように,伝統野菜の栽培は,実存的な私を認識し心身機能の衰退や喪失を受け入れつつ自分らしく生きることにつながっていた。