抄録
特発性気腹症は原因不明の気腹症と定義される。今回,過去の腹部CT画像に腸管気腫症が認められ,腸管気腫が気腹の原因と推測された症例を報告する。症例は40代男性。排便後の腹痛を主訴に受診した。全身状態は安定し腹膜刺激所見をわずかに認めるのみであった。腹部CTにて腹腔内遊離ガスを認め,血液生化学検査では白血球増多を認めた。上部消化管内視鏡検査では異常を認めなかったため下部消化管穿孔を疑い開腹手術を施行した。手術所見では,腹膜炎の所見を認めず,腸管の穿孔はなく,腹腔洗浄水の細菌培養は陰性であった。術後,ドレーンからは混濁のない排液のみで経過は良好であった。以上より,本例は外科手術を必要としない気腹症(nonsurgical pneumoperitoneum)であり,原因不明であったため特発性気腹症と診断した。しかし,4年前の腹部CT画像で回盲部に腸管気腫症が認められたことより,腸管気腫が本例の気腹の原因と推測した。