抄録
毒キノコであるニセクロハツによる重症横紋筋融解症を経験した。70歳代の男性が,自分で採取したニセクロハツを摂食した。嘔吐,下痢で発症し,続いて横紋筋融解症をきたした。当院搬送時の血清クレアチンホスホキナーゼ濃度(以下CK)は38,100IU/Lであった。
人工呼吸療法,大量輸液療法と昇圧薬の持続投与で循環動態を維持しながらオンライン血液濾過透析(以下OHDF)と持続的濾過透析で有害物質の除去を試みたが,血管透過性の亢進が続き,全身の浮腫が進行した。当院入院4日目にはOHDFを中断するとショック状態になってしまうため,連続してOHDFを施行した。しかし,最大CKは203,800IU/Lに達し,血圧の維持が困難となり,摂食から160時間後に死亡に至った。
OHDFは横紋筋融解による有害物質を取り除くことができるとされる。しかし,本症例では連続したOHDFでも除去しきれなかった。