2024 年 72 巻 5 号 p. 408-414
症例は70代女性,高血圧および心房細動で循環器内科に通院中,腹痛を自覚したためCTを撮影したところ,胃内に3cm大の腫瘤を認めた。上部消化管内視鏡検査で胃噴門部に3cm大の腫瘤を認め,超音波内視鏡ではgastrointestinal stromal tumor(GIST)や平滑筋腫が疑われたが本人の希望で経過観察となった。2年後のCTおよび内視鏡で腫瘤は3.5cm大に増大したため単孔式腹腔鏡下胃内手術を行なった。術翌日に吐血を認め上部消化管内視鏡検査を施行したところ,腫瘍切離部のstaple lineからウージングを認めたため止血を行なった。術後4日目から経口摂取を開始し,通過障害は認めず経過良好で術後10日目に退院した。病理診断はGISTでmodified Fletcher分類の低リスクの診断であった。術後3年経過しているが通過障害や再発を認めていない。単孔式腹腔鏡下胃内手術の適応や手技について文献的考察を加え報告する。