抄録
症例は66歳男性。間欠的な腹痛を主訴に当院を受診した。腹部超音波検査で右側腹部に腫瘤とTarget signを認め腸重積が疑われた。後日CT検査,下部消化管内視鏡検査を追加したところ上行結腸に5cm大の脂肪腫を認めたが,腸重積は自然と改善しており外来で経過を見ていた。内視鏡治療も考慮されたが,サイズが大きいことから手術目的に1か月後に当科へ紹介された。その際CTを再検したところ腸重積が再燃していた。経口摂取可能で,排便も認め腸閉塞の症状がなく,腹痛も軽度であったことから外来での経過観察を継続し,待機的に腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した。術後は合併症をきたさず術後8日目に退院した。
腸重積をきたした大腸脂肪腫の症例は比較的稀である。良性疾患であり,整容性に優れ,術後の回復も早い腹腔鏡手術の良い適応である。また腸重積をきたしていても,腸閉塞をきたしておらず,腹痛が軽度であれば,1~3か月程度の待機的手術も選択できると思われた。