日本農村医学会雑誌
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農作業に起因する呼吸器障害 (農夫肺等) に関する研究
野田 喜代一
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1975 年 24 巻 3 号 p. 262-263

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抄録
農村における呼吸器障害の実態を明らかにし, その原因を追究しで対策を樹立し, もって農山村住民の健康増進をはかるため, 北海道, 秋田県, 新潟県長野県, 静岡県, 愛知県, 熊本県の各地区で, 農村の呼吸器障害の実態を調査した。その成績の要点は次のとおりである。
(1) 入院患者のうち呼吸器疾患のしめる比率は7~17%, そのうち慢性閉塞性肺疾患は25~40%であった。(2) アンケート調査による呼吸器障害調査では, 咳たんを常時訴える者は10~30%であり, 呼吸器障害を悪化する農作業は稲刈り, 脱こく, もみすり, 農薬散布, 堆肥作り, 田植え, 養蚕, 茶つみしいたけ栽培, ハウス栽培等であった。多発する疾病は慢性気管支炎, 気管支喘息, 肺気腫等の順であった。(3) 肺機能検査成績で, 1秒率70%以下を示す者は, 北海道では10~20%, 長野県では35~45%であった。(4) 農夫肺は, わが国では昨年はじめての症例が報告された。長野県で, 今回28例について, 免疫学的検索が行なわれた結果全て陰性であった。(5) 住民の胸部間接X線成績では, 1~2%に肺気腫を認めた。
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