日本農村医学会雑誌
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農山村婦人の生活環境と健康に関する調査
静岡県・佐久間町
軽部 冨美夫
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1985 年 34 巻 2 号 p. 176-184

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抄録

昭和56年より58年の3年間に亘り, 検診と営農生活調査を行って, 山村婦人の生活環境と健康状態を解析し, 特に, 山村での農業者と非農業者の健康指標の比較検討を行った。30~69才までの婦人1,922名を対象に, 508名 (26.2%) の検診を行った昭和56年の成績では, 血圧値の異常者率 (WHO: B+C) は34.6%, 肥満者 (+20%以上) 24.4%で, 山村地帯の特徴を示したが, 農業者と非農業者での差はなかった。Hb値11.9g/dl以下の貧血老率は25.7%と, 従来の報告よりも高率で, 特に3年間を通して, 非農業者に有意に高い結果であった。
営農生活調査 (S.57: 328名) では, 農業者124名 (37.8%) のうち, 農業収入を中心として生活し得るとした婦人は14.5%にすぎず, 換金作物として一位を占めた茶は66.1%であったが, 二位のしいたけは12.9%と極端な差がみられた。身体愁訴にも, 農業労働の有無により差が生ずると思われた, 腰痛や流産では農・非農に差がなく, ガン検診受診率が農業者に有意に高率であったことなど, 農業者よりも, むしろ不健康な姿と意識で, 山村にしがみついている婦人層を発見した思いであった。

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