地方都市である徳島市域23行政区を対象とし, 農家人口, 農家戸数などの農業関連指標により農村地域, 非農村地域および混在地域に分類した。そして, 地域環境指標としての公害苦情からみた, これら地域における環境衛生状態の差異について実証的に検討した結果, 次のような知見を得たので報告する。
1.農村地域では水質, 悪臭苦情が多く, 混在地域では悪臭, 騒音苦情が多い。また, 非農村地域では騒音苦情が多いことが認められた。これらは, それぞれの地域における環境衛生要因との関連性がみられ, このことから, 発生しやすい公害事象が地域形態により異なることが認められた。
2.各地域における公害苦情発生について, 調査前期 (1977-1980年) と調査後期 (1981-1984年) の経時的変化を検討したところ, 農村以外の地域は総体的に減少の傾向にある。しかし, 農村地域においては, 粉塵を除くすべての公害事象が増加していることが認められた。このことから, 農村地域における環境衛生状態は悪化していることが示唆された。