日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
高血圧・脳卒中の地域較差に関する疫学的研究
菅原 保鈴木 康洋岩崎 清中村 洋一
著者情報
ジャーナル フリー

1988 年 37 巻 2 号 p. 78-86

詳細
抄録

脳卒中死亡率にみられる地域較差の要因を分析するために, 山形県内の44市町村から, 脳卒中標準化死亡比が高率な2町と低率な2町を抽出し, 循環器検診, 食習慣調査, 脳卒中発症調査等多角的な実態調査を実施した。
1. 山形県は脳卒中多発県であるにもかかわらず, 調査4地区とも血圧値は全国平均なみ, もしくはより低値を示していた。
2. 標準化死亡比の高低と血圧, 心電図, 眼底所見, 血清総コレステロール値の異常者出現率の高低の間には特定の関連を認めなかった。3. さらに, 検診受診者を職種別にみると, 事務系は最小血圧, 肥満度, 血清総コレステロールが農業, 現業系に比べ高値を示すなど, 同一地区の中でも職種間較差が認められた。4. 標準化死亡比, 中年期死亡率の高低と, 中年期発症率, 高血圧に臓器障害を伴う者の出現率の高低の間に異なった傾向を認め, 中年期発症率と, 高血圧に臓器障害を伴う者の出現率は似た傾向を呈していた。
以上より, 循環器病の地域較差の解析を行なうにあたっては, 死亡率からの研究だけでは不十分で, 循環器検診による有病率や, 少なくとも発症率の調査を併せて行なう必要があると思われる。また, 循環器病の地域管理においては, 脳率中死亡率の高い地区のみを重点的に対策するのでは不十分であり, 脳卒中発症率の動向や, 職種階層の違いを考慮した “きめ細かい” 対策が必要と思われる。

著者関連情報
© (社)日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top